<社説>南部ごみ処理場白紙 体制点検し抜本的改善を


社会
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 ごみ処理行政は住民生活に欠かせない。関係者はこれ以上、迷走しないよう緊張感を持ってほしい。

 糸満市、豊見城市、南城市、八重瀬町、与那原町、西原町のごみ処理を担う南部広域行政組合が、八重瀬町具志頭地区に予定していたごみ焼却施設・最終処分場の建設計画を白紙撤回した。
 予定地にある養豚業者の移転費に補助金が使えないことが昨年判明。移転先の環境影響評価(アセスメント)を実施する必要性も見落とし、日程調整が困難になったためだ。
 既存の処理施設の老朽化は深刻で、新施設の建設は待ったなしだ。場所選定が振り出しに戻った影響は大きい。用地選定が困難なごみ処理施設だからこそ、課題解決のめどを慎重に見極める必要があった。見通しが甘かったと言わざるを得ない。組合や構成市町はごみ処理行政の進め方や体制をいま一度チェックし、抜本的改善を図るべきだ。
 焼却炉の耐用年数は通常30年だが、与那原町の東部環境美化センターは供用開始から38年目で、糸満市の糸豊環境美化センターは25年目だ。南部広域行政組合は「いつ壊れてもおかしくない」と話す。
 新たな施設の建設地選定を進める中、八重瀬町が同町内の養豚施設の場所に誘致することを提案した。住民との間で臭気問題が生じていた養豚施設移転とごみ処理施設・最終処分場の整備を併せて実施する内容で、19年に建設場所に決まった。
 ところが、国の補助金の活用を見込んでいた畜産業者の移転費66億円について、活用できる補助金はなかった。各市町の分担金だけでは支払いは困難と判断した。環境アセスメントが必要なことも県の指摘で分かり、最短でも4年半を要するため「移転不要な用地を新たに探す方が期間を短縮し、経費も削減できる」として白紙に戻した。
 これによる影響は少なくない。19年の建設計画決定後、基本設計や地質調査に6市町の負担金6400万円、環境省交付金2200万円の計8600万円が投じられた。今回の白紙撤回で環境省交付金は返還する見込みだ。時間と経費が無駄になったと批判されても仕方がない。
 組合を構成する6市町には約26万人が暮らす。そのごみ処理の先行き不透明感が強まる結果を招いたことに、関係者は責任を感じるべきだ。
 今後は最終処分場を現在負担している南城市と、次期に負担する八重瀬町を除く4市町から、新炉の候補地を8月までに募り、2年後をめどに予定地を決める。37年度供用開始を目指す。最終処分場は33年までは現状の「美らグリーン南城」を使用し、その後、八重瀬町内に次期処分場を建設する。
 関係者は今回の選定やり直しについて手続きの在り方や問題点を徹底的に検証・整理し、次の計画を進める上での教訓にしてほしい。