<社説>教員不足シンポ 解決へ行動する時だ


社会
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 子どもたちの学ぶ権利を保障するために、行政や学校現場、地域、保護者らが連携して教員不足問題の解決に取り組まなければならない。21日に那覇市で開かれたシンポジウム「教員不足 打開への一歩」(琉球新報社主催)では、教育現場や行政、PTAらがそれぞれの立場から、解決に向けた方策が話し合われた。シンポジウムを機に、県民全体での取り組みを進めていきたい。

 教員不足の問題は全国で深刻化している。特に沖縄県は、公立小中学校教員の2022年5月1日時点での正規率(定数に占める正規雇用の割合)は81.2%と、全国で最も低かった。また、県内公立学校の今年4月の教職員未配置数は23人で、県独自で進める少人数学級編成が一部で維持できない状況にある。未配置数は年度後半にかけて増加する傾向にあり、事態は悪化する恐れもある。
 精神疾患により休職した県内公立学校の教職員数も、21年度は199人と過去10年間で最多となった。高止まりは続いており、その要因には深刻な長時間労働がある。
 シンポジウムで基調講演した慶應義塾大学教職課程センター教授の佐久間亜紀氏によると、教員不足の背景には、地方分権一括法以降の行財政改革を背景にした正規教員の採用抑制にあるという。少子化を背景とした採用控え、特別支援学級の増加や採用試験の応募者減、育休の長期化や病気療養に伴う休職者の高止まりなど、さまざまな要因による構造的な問題との指摘があった。
 一方で、英語の教科化やプログラミング教育の必修化など教育改革により業務は多忙化しており、教員不足の悪循環を生んでいる。
 非正規教員に依存した欠員対策も限界に来ており、現場教員の自己犠牲に頼るような現状を根本から見直さなければ、問題はますます深刻化していく。
 問題解決のために、国は現場や子どもたちの目線に立った教員不足の実態調査や、少人数学級を前提とした計画的な正規教員採用に取り組むべきだ。自治体には病休を減らすためのケアの充実や育休復帰支援、働き方改革の推進などが求められる。また地域や保護者らが共に子どもたちや学校を支える協働の仕組みを模索する必要がある。
 千葉県では、教職員や保護者らが協力して教員不足を解決しようと、「県民の会」が発足し、県民全体で考える運動体が生まれた。県内でも、きょうのシンポジウムを契機に、行政や学校現場、地域、保護者が自分事として、継続的に行動していくことが求められる。「県民の会」のような形で一体となった横断的な取り組みも必要だ。
 未来を担う子どもたちのために何ができるのか。教員不足問題の解消は、子どもたちを守り育てるために必要との認識を共有したい。