<社説>PFAS汚染と米軍基地 立ち入り調査を実施せよ


社会
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 米軍基地周辺の河川などから発がん性が疑われる有機フッ素化合物「PFAS」が高濃度で検出されている。この対応で国は消極姿勢に終始している。米軍施設との因果関係を直ちに調べる必要がある。

 29日の衆院決算行政監視委員会で防衛省は「(米軍施設との)因果関係について確たることを申し上げることは困難」と答弁した。
 詳しく調べていないから、そういう答弁になるのだ。住民の不安に向き合わない無責任な態度と言うほかない。住民の血中から検出されたとの調査報告が相次いでいる。国は直ちに各施設への立ち入り調査を米側に求め、いち早く実現すべきだ。
 沖縄では基地周辺で国の暫定目標値を上回る高い値が検出されている。2022年の基地周辺調査では、湧き水で最大42倍など、46地点中32地点で目標値を超えた。
 住民に広がる不安を受けて市民団体が22年に6市町村7地域で387人を対象にした血中濃度検査では、4割の155人が米国の学術機関が示す健康対策を要する目安値を超えた。
 沖縄だけの問題ではない。環境省のまとめでは21年度に13都府県の河川や地下水など、81地点で国の暫定目標値を上回った。
 東京都の多摩地域では、水道水に使われていた井戸水が汚染されていることが判明し、取水を停止した。井戸を水源としていた浄水場のある地域の住民の血中濃度が高い傾向にあることが市民団体の調査で明らかになった。汚染源は、かつてPFASを含む泡消火剤が土壌に漏れ出たとされる米軍横田基地であることが濃厚となっている。
 沖縄県は汚染源を絞り込むためボーリング調査地点を増やすなど対応しているが、自治体だけでの汚染源特定は難しい。日米地位協定がネックとなり、基地への立ち入り調査ができないからだ。
 環境補足協定で立ち入り調査が明文化されたが、米軍の通報があった場合に調査申請できる仕組みで、米軍の運用任せである。そもそも政府が協定で立ち入り調査が認められる条件に該当しないとの認識だ。このような態度では住民の健康を守れない。
 3月の環境省の専門家会議では自治体では汚染源特定が難しく、飲み水使用の可否を判断する手引の改定など環境省が対応策を拡充させる必要があるとの意見が相次いだ。逆ではないか。何よりも急がれるのは汚染源の特定だ。
 政府は日米合同委員会をはじめ、あらゆる協議レベルで立ち入り調査を求めなければならない。環境補足協定は米軍が原因を認め日本側に通報した場合に限り立ち入りを認めている。米軍が認めなければ調査できない現状を改めるべきだ。制限を受けない主体的な調査が不可欠だ。基地が汚染源として疑われているのだから、当然米軍側も責任を持って対応するべきだ。