<社説>電気料金改定 経営改革と丁寧な説明を


社会
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 物価高が続く中、日常生活に不可欠な電気料金の負担が家庭や事業者に重くのしかかる。6月から料金改定を実施した沖縄電力は丁寧な説明と経営改革によって、県民の理解を得なければならない。

 沖電が経済産業省から認可された規制料金の値上げ幅は、標準的な家庭(従量電灯、月間使用量260キロワット時)で33.3%(2771円)である。
 値上げ前の料金(8314円)に上げ幅を反映させると月額1万円を超えるが、政府の補助と県・県経営者協会による追加支援によって電気料金は月額8485円となり、値上げ幅は実質2.1%に圧縮される。7月請求分に関しては燃料価格の下落によって、月額8092円となり、一時的に電気料金は値上げ前の水準を下回る。
 しかし、国や県などの支援がいつまで続くか不透明だ。電気事業という高い公益性を理由に公金が長期的に投入されるわけではない。国や県の財政の制約もあり、全世帯や事業者向けの補助を永続的に継続することは困難だ。
 確かに沖縄の電気事業は厳しい環境下にある。多くの離島を有し、安定的に電気を供給するには莫大(ばくだい)なコストがかかる。その中で沖電は利益を確保しながら公益性の高い事業を続けなければならない。特に今回の値上げは、ロシアのウクライナ侵攻などで引き起こされた燃料費高騰によるものであり、やむを得ない面もある。
 しかし、県民の全てが今回の料金改定に納得しているわけではない。補助や支援が終了すれば電気料金が値上げされる可能性もあるのだ。
 理解しにくいこともある。今回の値上げ認可を受け、沖電は2024年3月期は連結の純損益が40億円の黒字(前期は454億5700万円の赤字)になるとの見通しを示している。黒字確保を目指すのは企業として当然だが、公金投入による黒字に疑問を感じる県民もいるだろう。経営改革による高コスト体質の改善を求める県民もいるはずである。
 電力小売りが自由化された16年以降も沖電は圧倒的シェアを占めている。県民は電気料金値上げをいやが応でも受け入れざるを得ない。だからこそ沖電は県民の理解が得られるよう丁寧な説明に努めるべきだ。同時に再生エネルギー導入の取り組みを含め、経営の方向性について県民に示してほしい。
 沖電の値上げ申請に際して経済産業省が募集した「国民の声」では、役員報酬カットを求める声や社員の給与水準を下げるべきだとの厳しい意見も寄せられた。
 燃料費に左右される課題は今に始まったことではない。沖電は抜本的な経営効率化を進めるべきだ。同時に、再生エネルギーの研究・導入などによって料金抑制に努め、県民サービスを充実させることも求められている。