<社説>同性婚不備「違憲」 当事者救済へ法整備を


社会
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 多様な婚姻の在り方を認める妥当な判断だ。同性同士の結婚を認めない民法などの規定は憲法違反だとして、愛知県内の30代の男性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は法制度の不備を認め、違憲と判断した。賠償請求は棄却した。

 判決は「異性カップルに法律婚制度を設け、同性カップルには関係を保護する枠組みすら与えないことは、国会の立法裁量を超える」と指摘。法の下の平等を定めた憲法14条と、婚姻の自由を定めた24条2項に違反するとした。
 同様な訴訟は全国5地裁であり、判決は4件目。「違憲」判断は札幌地裁に続き2例目だが、合憲とした大阪地裁、東京地裁判決も現行制度の不備を指摘しており、立法措置を求める点では一致している。先進7カ国(G7)のうち、同性婚や同性カップルの保護制度がないのは日本だけだ。同性婚を認め、当事者を救済する法を早急に整備すべきだ。
 名古屋地裁は判決理由で結婚は「生殖や子の育成のみにあるわけではなく、伝統的な家族観が唯一絶対のものではなくなっている」と指摘。同性婚導入に賛成する意見が増え「同性愛者を法律婚から排除する合理性が揺らいでおり、無視できない状況」とした。
 共同通信が先月まとめた世論調査では、同性婚を「認める方がよい」との回答が71%に上り「認めない方がよい」の26%を大きく上回った。同性カップルを婚姻相当とする「パートナーシップ条例」を全国300以上の自治体が制定している。
 同性婚の実現を目指す市民団体は「司法、世論の声は国会も無視できないレベルに達した」と評価する。家族法の専門家は、違憲状態を放置すれば「高裁や最高裁は国に賠償を命じる可能性もある」とし、抜本的解決に向け議論を直ちに始めるべきだとの考えだ。
 しかし、国会の議論は進んでいない。与党自民党が伝統的な家族観を重視する保守層を支持者として抱えており、党内に根強い反発があるためだ。岸田文雄首相は2月、同性婚の法制化を巡り「社会が変わってしまう」と国会で答弁し、批判を浴びた。首相秘書官だった荒井勝喜氏はその後、性的少数者らについて「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」と記者団に発言し、更迭された。国会議員の差別発言も後を絶たない。
 今国会で審議中の性的少数者への「理解増進法案」は、与野党の実務者で合意した「差別は許されない」との表現を「不当な差別はあってはならない」に変更し、法の理念を後退させた。政府や自民党は社会の求めや世論を軽視しているように映る。
 同性婚が認められない当事者は暮らしに多くの困難が伴う。税の配偶者控除や相続などの法的権利が認められない。問題の先送りはこれ以上、許されない。国会は当事者救済に向けた議論を一刻も早く進めるべきだ。