<社説>県民世論調査 沖縄は地方自治の埒外か


社会
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 この国に地方自治は根付かないのか。そう思わざるを得ない調査結果だ。

 明星大学の熊本博之教授らの研究グループが実施した県民世論調査で、沖縄への米軍基地の集中を不平等とする回答が71%に達した。県民の望みに反し、基地負担軽減は遅々として進んでいない。
 地域の政治問題について住民自らが意見し、前進を図ることが地方自治の本旨だ。その手続きに従い、県民は新基地建設を拒否してきた。しかし、その意思は退けられてきた。沖縄は地方自治の埒外(らちがい)に置かれているのかという疑いを県民は抱いている。
 普天間飛行場の名護市辺野古移設について「基地負担の軽減にはならない」との回答が全世代で多数を占めた。日米が進める基地負担軽減策が実は基地のたらい回しであり、機能強化にもつながることを県民は見抜いている。
 辺野古移設については賛意が29%に対し、反対や否定は46%。2019年の県民投票や昨年の知事選でも示された県民の強固な意思である。日本政府はしっかりと向き合い、県内移設が負担軽減にならないことを認めるべきだ。
 「県内の軍事基地は有事の際に攻撃対象となる」と考える人は83%に達した。米軍基地の集中する沖縄で県民の抱く当然の感覚だ。
 他方、集団的自衛権の行使が容認され、敵基地攻撃能力を有する軍備強化の中で中国や北朝鮮の脅威、台湾有事の危機が声高に叫ばれることに県民の不安が増幅している。
 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに全国瞬時警報システム(Jアラート)が発せられ、不安を増幅させる。5月の飛翔(ひしょう)体の打ち上げで政府は事前に人工衛星であると分析しつつ、「弾道ミサイルの可能性」と言い続けた。北朝鮮をけん制する意味合いだろうが、市民に必要以上に不安を抱かせるものだろう。
 調査結果は、若い世代ほど基地問題に対する「諦め」が広がっていることも示した。基地に対する市民運動への評価は厳しい。「基地反対運動は無意味」との設問に65歳以上の59%が否定的だったが、18~34歳の55%が賛同した。
 辺野古移設反対の民意を顧みることなく、政府は「唯一の解決策」として埋め立てを強行している。埋め立て承認を巡る県との係争で国は横車を押すような論理まで用いて埋め立てを強行している。こうした政府に対する諦観だ。
 熊本教授は「諦めている人が悪いのではなく、諦めさせる構造自体が問題だ」と指摘した。調査では、沖縄の問題について県外の人には「理解されないと感じる」が8割に達した。
 1993年6月の国会での地方分権推進決議から30年が経過した。中央集権化が強まっているとの指摘もある。日本の地方自治、民主主義に対する県民の疑念や失望を調査は物語っている。そのことを国民全体で受け止めてほしい。