<社説>防衛局職員差別発言 市民への侮蔑、根を絶て


社会
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 市民を侮蔑する発言が繰り返された。一職員だけの問題ではない。国策に異を唱える人々への差別意識が組織内に巣くっているならば、その根を絶たなければならない。

 辺野古新基地建設への抗議行動が続く本部港塩川地区で6日、沖縄防衛局の非常勤職員が抗議する市民に対し「気違い」と複数回発言した。防衛局は事実を認め、「抗議者に対する不適切な発言はあってはならない」と釈明した。
 公職にある立場の人がこのような言葉を発してはならない。抗議行動を続ける市民への差別であり、心の病にある人々に対する差別でもある。
 抗議行動を続ける市民と警備を担当する防衛局職員が向き合う現場は厳しい環境にある。しかし、いかなる状況であれ、人格を傷つけるような言葉はどちらからも発せられてはならない。
 市民によると、この職員による暴言は2~3カ月ほど前からあったという。沖縄防衛局はこれまで警備を担当する職員にどのような指導をしてきたのだろうか。
 今回の件を受け、防衛局は「局職員による不適切な発言があったことは遺憾だ。適切な警備活動を行っていくよう指導を徹底し、事実関係を確認の上で適切に対処する」とコメントしている。
 職員を指導するのは当然だが、それだけで済む話ではない。市民を敵視するような空気が組織内に存在しているならば、それを一掃する必要がある。過去の差別発言や行為を含めれば、沖縄防衛局だけの問題とも言えないのだ。
 2016年10月、東村高江の北部訓練場内ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に反対する市民に対し、大阪府警の機動隊員が「土人」と発言し、大きな問題となった。これも一隊員の暴言、失言では済まない問題を含んでいる。このような発言を助長する組織内の差別意識の存在を疑わざるを得ないからだ。
 「土人」発言に関して、当時の松井一郎大阪府知事が隊員を擁護するような文章をツイッターに投稿し、批判された。ヘリパッドに反対する市民を「テロリスト」、ヘイトスピーチ反対団体の辛淑玉(しんすご)共同代表を「黒幕」に例えたテレビ番組「ニュース女子」に対し、放送倫理・番組向上機構(BPO)が重大な倫理違反や人権侵害を認定した。
 2011年にはケビン・メア米国務省日本部長(当時)の「沖縄はごまかしとゆすりの名人」という発言や、田中聡沖縄防衛局長(当時)の「(犯す前に)これから犯しますよと言いますか」という発言もあった。いずれも沖縄差別を増幅させた。
 市民、県民が国策に抵抗するのは当然の権利であり、権力やメディアが差別してはならない。権力やメディアに自浄作用がなければ国民の声で是正を迫る必要がある。
 国民にその力があるのか。この国の民主主義と人権意識が厳しく問われている。