<社説>九州の豪雨被害 災害への備えを万全に


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 梅雨前線の影響で九州北部を中心に河川の氾濫や土砂崩れが発生し、11日夜までに7人の死亡が確認された。被災された方々にお見舞いを申し上げる。長雨による地盤の緩みが被害拡大に影響したとの指摘もある。引き続き防災情報に気を配り、警戒を怠らないことが求められる。

 今夏は特に暑くなるという。温暖化は激甚災害を呼び起こす。沖縄でも台風時の水害や土砂崩れ、猛暑に備えておく必要がある。
 今回は梅雨前線が対馬海峡付近の同じ場所に長く停滞した。その前線と日本の南にある高気圧の間の狭い範囲に西からの湿った空気が流入することで、水蒸気が集中したというのがメカニズムだ。
 近年、日本列島では7月の大雨や長雨による災害が頻発している。14府県で災害関連死を含めて305人が亡くなり、平成最悪の水害となった2018年の西日本豪雨も7月上旬の発生だった。21年7月には静岡県熱海市で大規模土石流が発生し、28人が命を落とした。
 地球温暖化を背景に多くの犠牲を引き起こす水害は毎年のように起こっている。特徴は前線の影響で発生する線状降水帯だ。局地的な現象でもあり、降雨量や場所などを完全に予測することは現在の技術では難しいという。
 それでも予報の精度は上がっており、自治体も備えを取っている。しかし、これにも限界がある。今回の被害でも一部の自治体で避難指示の発表遅れなどが指摘された。予報を上回るような雨量、降雨のピークのずれもあったという。災害がいつ発生するのかを見通すことの難しさだ。
 行政が発信する情報に注意をしつつ、自らが身を守る意識を持ち、油断をしないことが重要だ。
 異常気象を呼び起こす気候変動は、私たちの生活と切り離すことはできなくなっている。特にこの7月の平均気温は世界規模で観測史上例のない高さとなった。世界気象機関(WMO)によると7月7日の世界平均気温は17・24度で、16年8月16日の16・94度を上回り、過去最高となった。
 今年はエルニーニョ現象が発生している。南米ペルー沖の海水温が上がる現象で、発生すると日本は冷夏となることが多いが、今夏は異なる。
 エルニーニョの逆の現象であるラニーニャ現象の「名残」などの複合的な要因で8月は厳しい暑さとなる見込みだ。気温が上がれば大気中の水蒸気が増え、降水量の増加につながる可能性もあるという。沖縄の気温も平年より高くなる見通しで、気象情報に注意する必要がある。
 市町村は災害リスク情報をまとめたハザードマップを作成し公開している。国土交通省のサイトでは沖縄を含め、全国のハザードマップを確認できる。県内でも洪水や土砂災害の危険性のある箇所が表示される。まずは住む地域の状況から確認してほしい。