<社説>オスプレイ久米島へ 軍事拠点化に反対する


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 沖縄の島々で軍事拠点化が着々と進められている。住民を戦争に巻き込む極めて危険な動きだ。

 在沖米海兵隊は9日から航空自衛隊久米島分屯基地で海洋監視の訓練を単独で実施している。15、17の両日、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ、または空軍使用のCV22オスプレイの飛来が予定されている。久米島へのオスプレイ飛来は初めてとみられる。
 この訓練について在沖米海兵隊は本紙に対し、第3海兵遠征軍情報群(3MIG)が実施部隊となり、離島に臨時拠点を設け、分散して戦う海兵隊の「遠征前方基地作戦(EABO)」を実証すると説明した。3MIGは第3海兵遠征軍の前衛となり、久米島のような「主要な海洋地形」に少人数の海兵隊員を派遣することを専門とした部隊である。
 中国を想定した米国の戦略によって住民生活に重大な影響を及ぼす軍事拠点化が強行されることは許されない。仮に有事になった場合は住民の人命にも関わる。今回の訓練を含め、軍事拠点化をにらんだ動きに反対する。
 EABOは、海兵隊と海軍が連携して敵陣に向かって前方の離島を占拠し、給油や攻撃の臨時拠点をつくる戦略だ。これまで伊江島補助飛行場を拠点に、渡名喜村の入砂島やうるま市の浮原島など広範囲で訓練を実施してきた。
 キャンプ・ハンセン(金武町など)にある在沖米海兵隊の一部部隊は、2025年までにEABOに特化した海兵沿岸連隊(MLR)に改編される予定だ。沖縄へのMLR配置は今年1月に開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で公表された。
 米海兵隊トップのデービッド・バーガー司令官は5月、共同通信のインタビューに答え、沖縄に配置されるMLRの役割について、台湾に軍事圧力を強める中国を抑止し、前方展開を続けることだと強調した。海兵隊は自衛隊と共に「強固な統一戦線を形成する」とも語った。
 「中国の脅威」を名目とした在沖米海兵隊の組織改編と米軍と自衛隊の一体化は、沖縄にさらなる基地負担を強いるものだ。それだけではない。MLRの沖縄配置は当然、中国を刺激し、軍事的緊張感を高めることになろう。有事の際には米中の武力衝突に沖縄を巻き込む危険性をはらむ。
 沖縄の島々を中国の防波堤とするような動きを受け入れるわけにはいかない。アジア・太平洋地域の不安定な安全保障環境は不断の外交努力によって克服されるべきである。久米島における訓練やMLR沖縄配置はそれに逆行するものである。
 久米島は78年前の沖縄戦で日本軍が駐屯し、悲惨な住民虐殺が起きた地である。この歴史的経験と「軍隊は住民を守らない」という教訓に照らしても、久米島の軍事拠点化と、それをにらむような訓練を許すわけにはいかない。