<社説>ガソリン補助継続 価格安定へ抜本的議論を


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 ガソリンなどの燃油価格を抑制するため、岸田文雄首相は9月7日から補助金を段階的に拡充し、年末まで支援を継続すると表明した。レギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は、8月28日時点で185円60銭と最高値を更新。車が欠かせない地方を中心に大きな影響が広がっている。

 補助金の継続は家計負担の緩和につながる。しかし補助金による高騰対策は、対処療法に過ぎない。価格安定化に向けた議論を急ぐ必要がある。
 ガソリン価格は、日本がほぼ全量を輸入している原油価格や外国為替相場の変動に大きく左右される。ウクライナ情勢の緊迫化などによる原油相場の高騰や、円安傾向がガソリン価格を押し上げたため、政府は2022年1月から補助金の支給を開始。原油高が一服した23年1月から補助上限の縮小を始め、6月には補助率引き下げに着手、9月末で終了する予定だった。
 しかし、主要産油国の減産や補助開始時と比べ円安ドル高傾向が進んだことなどから原油輸入価格が上昇。補助を段階的に縮小したこともあり、8月に入り全国平均小売価格は180円台に突入、政府は補助金の継続を決めた。
 補助金は、政府が元売り各社に支給して卸価格の値上がりを抑える方法だ。財源は予算の使い残しを充てる方針だという。
 生活に車が欠かせない地域や、沖縄など離島県にとって、ガソリンはライフラインを支えるものだ。国内の物流を維持するためにも、高騰対策は重要となる。
 一方で、補助金の継続・拡大が続けば、財政に影響することは必至だ。車を持たない人にとっては恩恵がなく、高所得者でも車を持っていればメリットがあるなど公正さをを欠くとの指摘もある。
 価格抑制を巡っては、3カ月連続で160円を超えた場合に税率を引き下げる「トリガー条項」の凍結解除が取り沙汰された。
 そもそもガソリン価格では、揮発油税と地方揮発油税を合算したガソリン税53.5円が徴収されているが、その中には、暫定税率廃止に伴い創設された特例税率で25.1円が含まれている。さらに石油石炭税などのほか、消費税も課せられており「二重課税」の指摘もある。
 「トリガー条項」はこの上乗せ分の25.1円を停止する措置だ。減税による財政への影響もあるだろうが、ガソリン補助金に措置した予算は、これまでに6兆円に達する。補助金の継続でさらに膨らみ続けることになる。補助金継続と比較し、どちらが国民生活にもたらす効果が大きいのか改めて検討すべきだ。
 原油相場や為替相場に左右されにくい安定的な価格を維持するためにも、トリガー条項凍結解除の議論を進めるだけでなく、ガソリンを巡る税の在り方について、抜本的に見直すことが求められる。