<社説>南城市議会百条委否決 市民の不信招かないか


<社説>南城市議会百条委否決 市民の不信招かないか
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 南城市の古謝景春市長による運転手の女性へのセクハラ疑惑で、南城市議会は疑惑を調査する特別委員会(百条委員会)の設置を賛成少数で否決した。

 胸を触られたと被害を訴える女性と、「肩をたたいただけだ」という市長の主張は対立している。女性は損害賠償を求めて提訴する意向を示しており、事実関係は裁判で争うことになるだろう。
 だが、裁判を待たずとも、市議会として事実関係の調査など独自にやるべきことがあるはずだ。市長のセクハラ行為が疑われた以上、事実関係を明確にしない限りは、市政に対する市民の強い不信を招くことにならないか。市民の負託を受けた市議会は、市長の業務時間中の行動や市の行政処分の在り方に目を光らせ、不適切を疑われるようなことがあれば厳しく追及する責務がある。それを忘れてはならない。
 市長は特別職に当たる地方公務員だ。国家公務員法に基づき公務員の職に関する規則や勤務環境などを定める人事院によると、セクシュアルハラスメントの定義は「他の者を不快にさせる職場における性的な言動」である。
 セクハラかどうかについては「基本的に受け手が不快に感じるか否かによって判断する」としている。市長は「肩をたたいた」と説明するが、人事院は職場で起きやすいセクハラについて「身体に不必要に接触すること」を挙げている。
 市長は取材に対し、背後から女性の体に触れたことを認めている。女性は不快を超えた恐怖を感じたからこそ被害を訴え、市に第三者を入れた調査を求めたのではないか。被害の申告があった時点で、市はセクハラの可能性を認識し、調査すべきであった。
 ところが市は第三者を入れた調査を拒否した上に、「体調不良に伴う業務不履行があった」と期限の3カ月前に契約を一方的に打ち切った。市長に至っては「(告発者の)やったことを全部暴露する」と女性を脅すかのような発言をしており、専門家は「パワハラになり得る」と指摘した。
 百条委員会の設置を求める決議案は、与党会派の「ゆまぢり会」「ニライ・カナイ」の計10人と無会派で公明党の1人が反対した。与党の大勢は市長の説明を了承したとの立場だが、議場の傍聴者を含め、市民は市長の説明や議会の判断を受け入れるだろうか。
 市長は「(女性を)家族のようにかわいがって信頼して、運転手として雇ったのに裏切られた気分だ」とも述べている。市の契約に個人的な私情を持ち込んだような印象を受けるが、契約までの経緯についても議会は調査する必要があろう。
 南城市が信頼される市政運営を続けるために、市長は説明責任を尽くさなければならない。同時に、議会は市民の立場に立って公正に事実関係の解明に努めるべきだ。