<社説>教員精神疾患休職最多 相談体制の整備が急務だ


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<社説>教員精神疾患休職最多 相談体制の整備が急務だ
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 沖縄で2022年度に公立小中高・特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は21年度より30人増の229人で過去最多だったことが文部科学省の調べで分かった。全教員に占める割合は1・45%で全国ワーストだ。

 背景には22年度は新型コロナウイルスの感染拡大が前年度より悪化し、学校で感染防止策など業務負担が増えたことがあるとされる。ただコロナ前から精神疾患による休職者は増える傾向にあった。
 県や市町村の教育委員会は、なぜ沖縄は全国一高いのかも含めて原因を究明し、その結果を踏まえた抜本的対策が求められる。まずは教員の孤立を防ぐために相談窓口の整備を早急に進めるべきだ。教員の心身の健康を守る産業医の配置徹底も欠かせない。
 県教委は23年4月に働き方改革推進課を新設し、病休者の原因を分析しながら、病休に至らないよう初期対応を重視した相談窓口の整備に取り組み、市町村教委にも体制づくりを呼びかけている。教職員の業務量の軽減など働き方改革も推進している。
 今回の精神疾患の統計は22年度なので、本年度以降、対策の効果が表れるかもしれない。しかし今年11月時点で県内公立学校では104人の教員未配置が生じている。前年同期比では30人減っているが、問題の解決には至っていない。県教育委によると、急な病休などが要因だ。
 病休者が出ると他の教員に業務負担が及び、さらに疲弊者を出すという悪循環を生む。精神疾患など病気が深刻化してからでは遅い。教員が少しでも不調を感じた時に予防的に相談でき、メンタルケアの助言を受けられるような環境の整備が肝要だ。相談窓口整備や産業医の配置徹底は、なり手不足などの課題も多いだろう。医療機関や医師会との連携が必要だ。
 教員不足を巡っては、特別支援学級の増加が採用数を上回って配置が追い付いていないことや、行財政改革を背景にした正規教員の採用抑制、慢性的な業務過多など多くの要因が指摘されている。
 教員だけでなく、教員を支援する人材など、どこもなり手不足という課題もある。県教委が、免許取得を予定する大学生らを非常勤講師として任用するほどだ。本来なら国が抜本的解決に向けて財政支援や制度設計を急ぐべきだ。子どもたちを守り育てるために、教員を守り、学校を働きがいのある職場にすることは国家の最優先課題だ。県や市町村も一体となって取り組まなければならない。
 一方、学校を取り巻く地域住民ができることもあるはずだ。各校の実態に即した実効性ある対応を、学校現場や行政、保護者、地域が連携し考案・実行する活動も必要だ。教員不足の要因には保護者による過度な苦情もある。教員が苦しむ状況を、まずは周囲や関係者がよく理解することが解決への大切な一歩だ。