<社説>米大統領の広島訪問 被爆者に謝罪し核廃絶を


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 オバマ大統領が被爆地広島を訪れる。原爆を投下した米国の現職大統領として初めてとなる。

 真に歴史的な訪問にするためには、オバマ氏が核兵器について何を語り行動するかにかかっている。被爆者に会って謝罪し、核兵器廃絶へ具体的な道筋をつける決意を世界に発信するよう求める。
 オバマ氏は就任当初の2009年4月、チェコのプラハで「核兵器なき世界」を訴え「核兵器を使用した唯一の核保有国として行動する道義的な責任がある」と演説し、同年ノーベル平和賞を受賞した。
 翌年、ロシアとの間で新戦略兵器削減条約(新START)を結んだが、ウクライナ問題でロシアとの関係が悪化し核軍縮交渉は進展していない。爆発を伴う核実験を禁じる包括的核実験禁止条約(CTBT)も米議会の批准が得られていない。「核兵器なき世界」を掲げながら核保有の方針を崩さず、臨界前核実験を繰り返すなどオバマ政権の姿勢は大いに疑問である。
 被爆者の平均年齢は80歳を超えている。唯一原爆を使用し、今も多くの核兵器を持つ米国に対する怒りと謝罪を求める声がある一方、訪問決定を歓迎する複雑な思いがある。「『原爆投下は過ちだった』と述べてほしい」という願いや「原爆がどれだけ人を苦しめたのか、被爆者に会って聞いてほしい」という声は切実だ。
 核保有国による核軍縮が尻すぼみになる中で、非核兵器国が主導し、核禁止条約をつくろうという動きが進む。オバマ氏は広島で核兵器の非人道性を心に刻むためにも、被爆者と会うべきだ。
 安倍晋三首相はオバマ氏と共に広島を訪問する。オバマ氏は戦火を交えた日米が強固な同盟国となった戦後の歩みと絆に言及するという。それは筋違いだ。安倍内閣は憲法9条が一切の核兵器保有と使用を禁止するものではないとする答弁書を閣議決定した。非核理念と矛盾する。安倍氏は被爆国の首相として、オバマ氏に働き掛け核廃絶と核禁止条約の締結を世界にアピールさせるべきである。
 一方、日米は沖縄の日本復帰後も有事には米軍が核を持ち込めるとした密約を交わしている。米側は今も沖縄への核の再持ち込みを念頭に置いた訓練を実施している。広島訪問を機に日米は密約を破棄し「核兵器なき沖縄」を実現すべきだ。