<社説>県政運営方針 危機感を抵抗力に変えよ


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<社説>県政運営方針 危機感を抵抗力に変えよ
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 在沖米軍基地の固定化、沖縄の島々で急速に進む軍事拠点化への危機感が示された。それを抵抗の力へと変えていく道筋が求められている。

 玉城デニー知事は2024年度の県政運営方針を発表した。辺野古新基地建設への対応、経済自立、子ども施策、離島振興、男女共同参画などに関する方針や施策が並んだ。平和で豊かな沖縄づくりのため、いずれも重要な項目である。次年度予算案と合わせ県議会で審議し、具体的な施策展開につなげてほしい。
 玉城知事は新基地問題や自衛隊増強に対して、強い調子で沖縄の立場を表明した。
 政府による新基地設計変更の代執行と大浦湾側の工事着手に対して「沖縄の過重な基地負担の格差を永久化、固定化しようとしている」と断じた。自衛隊増強については「自衛隊の急激な配備拡張により、沖縄が攻撃目標になることは、決してあってはならない」としている。
 県政運営方針で玉城知事が表明した危機感は多くの県民に共有されるものであろう。今求められているのは、新基地建設や自衛隊増強に歯止めをかける具体的な方策を県民に示すことである。
 地方自治に反する手法で1県に忍従を強いる国の姿勢に抵抗する地方自治体の連携を模索したい。同時に沖縄の過重な基地負担を疑問視する国民世論の醸成も必要だ。それが新基地建設に固執する国のかたくなな姿勢を突き崩す前提となる。沖縄は孤立していないことを政府にはっきりと示すべきだ。
 自衛隊増強に関しては明確に反対の意思を表明しなければならない。宮古、石垣、与那国における施設や装備の増強、うるま市石川の陸自訓練場整備に対しても、県は反対の意思を国に伝えるべきだ。軍事拠点化を意図した県内空港・港湾の整備に関する県の立場を表明してほしい。
 新基地や自衛隊増強と並んで県民の安全・安心を守る施策として急がれるのが、米軍基地が汚染源として疑われている有機フッ素化合物(PFAS)への対策である。
 県政運営方針では「基地内への県の立ち入り調査、国または米軍による原因究明調査と対策の実施を日米両政府に対し求めていく」としている。しかし、ダム貯水率の低下で、PFAS対策で中断していた中部水源からの取水を再開する事態となった。県民の健康を守り、不安を取り除く対策を早急に打ち立てなければならない。目の前に迫る安心・安全の危機と受け止めるべきだ。
 来年、戦後80年の節目を迎える。県は第32軍司令部壕の保存・公開や県平和祈念資料館のリニューアルを進めている。沖縄戦の実相を伝える人材育成が不可欠だ。平和行政の意義を再確認し、32軍壕公開や県平和祈念資料館の刷新を通じて平和を希求する「沖縄のこころ」の発信と継承に努めてほしい。