<社説>陸自訓練場反対超党派 計画は即時撤回すべきだ


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<社説>陸自訓練場反対超党派 計画は即時撤回すべきだ
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 うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を新設する計画について、石川地区の与野党市議が沖縄防衛局に対し、計画反対を伝えた。石川地区の全15自治会でつくる石川地区自治会長連絡協議会も玉城デニー知事に計画断念を求める立場で防衛省に働きかけるよう要請した。

 超党派による反対運動の背景には、地域住民の強い危機感がある。予定地が静かな住宅地に隣接している上に、教育施設もあるのだ。
 沖縄全体の軍事要塞化が急速に進んでいる。辺野古新基地建設に加え、自衛隊の増強、軍事拠点化を意図した特定利用空港・港湾への指定がある。米海軍のミサイル駆逐艦の石垣港寄港計画には、港湾労働者が反発している。
 17日の木原稔防衛相との会談で玉城知事は計画を白紙に戻すよう求めた。木原防衛相は土地の利用の在り方を再検討するよう指示したと明らかにしたが、住民の意思は建設反対である。防衛省は即時、計画を撤回すべきだ。
 今月11日に防衛省が開いた住民説明会では、住民から「区民のことを何も考えていない」などと反対の声が相次いだ。生活環境悪化への危惧は強く、防衛省側は住民の不安を払拭できなかった。
 訓練場では、新隊員の教育、災害への対処訓練、ミサイル展開など部隊展開訓練を実施する。防衛省は当初、空包の使用やヘリの輸送訓練も予定していたが、説明会では、実弾、空包、照明・発煙筒などの化学火工品は使わず、災害時や緊急時などを除いてヘリは飛行しないと説明した。
 住民の反対を弱めるための懐柔策であろう。しかし訓練場ができてしまえば「日本を取り巻く安全保障環境の悪化」などを理由に、なし崩し的に訓練内容を変更しかねない。与那国や石垣がいい例だ。
 与那国駐屯地は当初、沿岸監視部隊の配置のみだったが、地対空ミサイル部隊の配備が決まった。石垣駐屯地については昨年4月の建設段階で「日米共同使用や訓練は現段階で全く計画されていない」と説明されていたが、数カ月後には日米共同訓練が実施されるなど、当初の説明と異なる運用になっている。
 新訓練場について政府関係者は「自衛隊は将来的に、いろんな使い方を考えるだろう」と話した。住民説明会で示された内容は信頼できない。
 うるま市では、陸自勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊とミサイル連隊本部の新編も予定されている。訓練場新設は石川地区だけの問題ではない。沖縄の軍事要塞化を考えれば、沖縄全体の問題だ。平時における事故や騒音などの被害に加え、有事の際には、攻撃目標にされる。
 地元住民や党派を超えた市議の反対がある以上、防衛省が建設計画を強行することは許されない。辺野古新基地同様、住民の意思を無視するのなら、もはやこの国は民主主義を放棄したのに等しい。