<社説>自民党裏金問題の行方 全容解明の意思見えない


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<社説>自民党裏金問題の行方 全容解明の意思見えない
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 いらいらは募るばかりだ。自民党のパーティー券裏金問題を巡る岸田文雄首相の国会答弁に、全容を解明しようという意思が全く見えない。違法行為に長年関与した派閥幹部に反省の色は見えず、説明責任を果たすつもりもない。小手先の法改正でやり過ごせば国民の関心が薄れると考えているのではないか。国会で進展しないなら、有権者が選挙で審判を下すしかない。

 自民党は15日、政治資金収支報告書に不記載のあった議員ら91人への聞き取り調査の報告書を公表した。全て匿名で、パーティー券売り上げの資金還流を認識していた議員らは32人、うち11人は不記載も認識していた。2018~22年の5年間の不記載総額は約5億7949万円だった。「違法な使途に使用した」と述べた者は一人もいなかったとし、使途については会合費や書籍代など15の項目名を列挙しただけだった。「使うと危ないと考えて現金のまま保管していた」「幹部の責任問題だ」などの議員らの声も紹介した。
 報告書では、還流は遅くとも十数年前からあり、20年以上前の可能性もあるとした。しかし、だれが、いつ、なぜ巨額の裏金システムをつくったのか、何にいくら使ったのか、という国民の疑問に全く答えていない。開始時期に関わった可能性のある人物への聞き取りも行っていない。
 目下、国会での攻防の焦点の一つは政治倫理審査会(政倫審)である。野党は衆院で、収支報告書に記載していなかった議員51人の出席を要求している。しかし、出席には強制力がなく、本人が承諾しなければ公開もできない。証人喚問と異なり偽証罪も問われない。これで真相が明らかになるとは思えない。政倫審に時間を費やすより証人喚問に取りかかるべきだ。
 まずは、違法性を認識している政治家は全員辞職すべきであると、改めて指摘したい。同時に、自民党として、なぜこのように長期にわたる組織的違法行為が始まり、裏金は何に使ってきたのかを明らかにし、関係政治家らを処分しなければならない。
 裏金を保管していた、または使い切らなかった場合、収入として課税しないのは不公平だ、という声も日々、強まっている。当該議員らに追徴課税を受けさせなければならない。さらに税金が原資である政党交付金も返上すべきであろう。
 再発防止には、政治資金規正法の抜本改正が必要だ。政治資金の1円までの透明化、会計責任者を政治家とした上での連座制導入、政策をゆがめていると見られかねない企業・団体献金の禁止である。だが、自民党は抜本改正に強く抵抗するだろう。
 このような政治を許してきた責任は有権者にもある。地方も含む一つ一つの選挙でこの問題を争点化し、有権者の審判によって政治の浄化を図っていく必要がある。