<社説>政倫審開催へ 証人喚問で追及すべきだ


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<社説>政倫審開催へ 証人喚問で追及すべきだ
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 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、衆院は政治倫理審査会(政倫審)を28、29日に開く方向だ。出席は松野博一前官房長官ら自民安倍派、二階派の5人にとどまり、いずれも非公開での審査を望んでいる。

 野党は、派閥からの還流額を政治資金収支報告書に記載しなかった衆院議員51人全員の出席を求めていた。自民党はその要求を退ける一方、予算審議への影響を懸念し、野党が特に求めていた松野氏ら5人の出席で窮余の一手を打った形だ。野党は5人の答弁次第では参考人招致や証人喚問の実施を見据える。
 そもそも非公開の政倫審で問題の全容を解明できるとは到底思えない。これまでの自民党の聞き取り調査では、誰が、いつ、なぜ巨額の裏金システムを作ったのか、何にいくら使ったのか、全く不明だからだ。自民党は問題にメスを入れ、自浄を図る姿勢を根本的に欠いている。衆院は、政倫審と異なり偽証罪を問える証人喚問で事実を解明し、責任の所在を追及すべきだ。
 政倫審への出席を申し出たのは、解散方針を決めた安倍派の「5人組」のうち、松野氏、高木毅前国対委員長、西村康稔前経済産業相の事務総長経験者3氏、座長を務めた塩谷立元文部科学相、同様に解散方針の二階派、武田良太事務総長の計5人。
 安倍派内で若手を中心に裏金問題の説明が不十分な幹部への根強い批判が政倫審の背景にある。幹部に限定し、不満を抑え込むという岸田政権の警戒感が透けて見える。
 野党の要求を完全に拒否して折り合わないままでは2024年度予算案の審議に影響し、23年度中の自然成立が確実な日程までの衆院通過が困難になるとの焦りもある。
 しかし、党内にくすぶる不満の抑え込みや予算審議の日程を裏金問題の駆け引き材料にしていること自体、国民の政治不信に対する認識が甘いことの証左である。
 自民党は先月、党政治刷新本部で改革の中間報告をまとめたものの、今回の問題で大きな焦点となっている政治資金規正法改正にどう対応するのか見えていない。本気で法改正に取り組むのか疑問だ。
 その中での政倫審である。偽証罪に問われないため、真相解明の実効性が疑問視されている。過去にも、疑惑のある政治家が潔白を主張し「幕引き」を図る場に利用された面がある。
 今回の政倫審を自民党の「みそぎ」にしてはならない。事実関係を解明せず、責任の所在を曖昧にしたままなら、第二、第三の裏金問題を引き起こす。自民党は自ら問題解明を徹底する意思があるのなら、少なくとも審査は公開で実施すべきだ。
 自民党は裏金作りの経緯と責任の所在を明確にし、関わった議員を厳正に処分すべきだ。違法性を認識した議員は全員辞職することが国民の政治不信に応える唯一の道だ。