<社説>ガザ戦闘半年 即時停戦を決断すべきだ


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<社説>ガザ戦闘半年 即時停戦を決断すべきだ
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 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘は、7日で半年となった。ガザ側の犠牲者は3万3千人以上となり、餓死者も出るなど人道危機は深刻の度を増している。これ以上の犠牲を出してはならない。イスラエル、ハマスとも即時停戦すべきだ。

 戦闘は昨年10月、ガザを実効支配していたハマスがイスラエルに越境攻撃を仕掛けたことが発端だ。イスラエルは報復空爆を開始し、同月下旬には地上侵攻した。
 ハマスの攻撃でイスラエル側の死者は約1200人、多数の民間人が拉致されている。ハマスの「テロ行為」は強く非難されるべきだが、圧倒的な軍事力を持つイスラエルの報復は度を越しているとの指摘もある。この間、ガザの病院や避難所もイスラエル軍の攻撃を受け、死者の70%は女性や子どもとされている。支援物資搬入も厳しく制限され飢餓が広がっている。
 ハマス壊滅を掲げるイスラエルのネタニヤフ首相は、強硬路線を崩さず、ガザ最南部ラファへの侵攻を計画している。食料安全保障の危機度を分類した国連の「総合的食料安全保障レベル分類」の報告書によると、ラファ侵攻が実行されれば、ガザの110万人が壊滅的な食料不足に陥る恐れがある。人道危機を拡大させてはならない。
 ネタニヤフ氏に対しては、イスラエル国内で反政権デモが広がる一方、国外でも批判の声が強まっている。
 これまでイスラエルを支援してきた米国のバイデン大統領は、ネタニヤフ氏との電話会談で、民間人を保護する具体策の発表と履行を要求した。応じなければイスラエル支援を見直すと警告した。ガザの人道状況についても「容認できない」と即時停戦を求めた。米国人を含む食料支援団体のメンバー7人がイスラエル軍の攻撃により死亡したことを受け、バイデン氏は態度を硬化させたとみられる。人道危機の拡大を未然に防ぐことはできなかったか。即時停戦へ向け、バイデン氏はイスラエル側への働きかけを強めるべきだ。
 ガザ戦闘を巡って国連安全保障理事会は3月、イスラエルとハマスにラマダン期間中の即時停戦を求める決議案を初めて採択した。これまで停戦を盛り込んだ決議案は米国が拒否権を行使してきたが、今回は行使せず棄権した。米国内でもイスラエルへの批判が高まっていると言える。
 戦闘休止と人質解放を巡る交渉がエジプトの首都カイロで行われる見通しだが、先行きは不透明だ。
 イスラエル軍は1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館を攻撃した。紛争の拡大も懸念される。イスラエルとハマスの交渉を進展させ、停戦を決断させなければならない。双方が妥協できる環境整備に向け、米国をはじめとする国際社会が問われている。