<社説>日米首脳会談 沖縄無視の同盟強化だ


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<社説>日米首脳会談 沖縄無視の同盟強化だ
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 日本の米国追随姿勢は目に余る。沖縄にさらなる基地負担を強いるような同盟強化、軍事一体化を受け入れるわけにはいかない。

 岸田文雄首相とバイデン大統領の日米首脳会談は、日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化は急務とした上で、自衛隊と在日米軍の連携強化に向けた指揮・統制枠組みの見直しで合意した。
 発表された日米首脳共同声明は沖縄を含む南西諸島での同盟の戦略態勢の最適化を明記した。普天間飛行場の返還・移設については「辺野古が唯一の解決策」という従来の姿勢を繰り返した。
 「南西シフト」を軸に自衛隊と米軍の一体化運用を強く打ち出した日米首脳会談や共同声明は基地負担の軽減を求める県民の願いと逆行するものだ。沖縄を無視した同盟強化だと言わざるを得ない。
 在沖米軍基地がもたらす人権侵害や環境破壊に苦しみ、有事の際に攻撃目標となる自衛隊基地の増強に危機感を抱く県民の姿は眼中にないのだろう。沖縄の苦境を打開しようという意思がうかがえないことに深く失望する。
 普天間飛行場の返還合意から28年が経過した。「辺野古唯一」への固執は日米両政府の思考停止を示すものだ。軟弱地盤の存在から難工事が予想される新基地建設が現実的な手法なのか、両政府は再検討に踏み切るべきだ。普天間飛行場の危険な状態を放置することは許されない。
 首脳会談や共同声明を通じて、日本の米国への追随姿勢は一層鮮明になった。それは岸田首相による連邦議会上下両院合同会議における演説でも如実に表れている。
 2015年の安倍晋三元首相以来、日本の首相として2例目となる演説で岸田首相は、日本を「米国のグローバル・パートナー」と位置付けた。両国が世界の平和と繁栄に「責任を担っている」と強調し、日本は「堅固な同盟と不朽の友好を誓う」と述べた。
 さらに、中国は国際社会の平和や安定への戦略的挑戦をもたらしていると言明した。北朝鮮の核・ミサイル計画に関しても東アジアにおける直接的な脅威とした。その上で、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保持を可能にする22年末の国家安全保障戦略の改定に触れ、「私自身、日米同盟を一層強固なものにするため、先頭に立って取り組んできた」とアピールした。
 中国や北朝鮮を日米両国の共通する脅威と見定め、米国の戦略に追随し、補完するような日本の外交・防衛政策は沖縄を固定的に軍事拠点とするものだ。武力に武力で対抗するのではなく対話重視の外交姿勢に転じるべきだ。
 首相演説では「平和」「安定」と共に「自由と民主主義」という言葉が出てくる。残念ながら沖縄はその埒外(らちがい)に置かれている。民主主義国家を掲げるならば、日本政府は沖縄の声を国内政治と対米交渉に反映させなければならない。