<社説>嘉手納で降下訓練 必要なら米本国で実施を


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<社説>嘉手納で降下訓練 必要なら米本国で実施を
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 米軍は19日、5カ月連続となる嘉手納基地でのパラシュート降下訓練を強行した。日本政府は「例外的な場合」に該当するとして容認しているが、毎月定期的に繰り返される訓練を「例外」と言い張るのは、もはや通用しない。

 米側が伊江島補助飛行場の滑走路改修に「1年半程度」かかるという見通しを日本側に伝えていたことも判明した。それまでの間、嘉手納基地を使って訓練を維持していくとすれば、明らかに「例外」の範囲を超えている。常態化は許されない。
 改修に時間を要する以上、沖縄でのパラシュート降下訓練はそれまで一切停止とするのが当然だ。日本政府は、今の沖縄に降下訓練ができる場所がないことを米側に明確に示さなければならない。必要な訓練というのであれば、米本国で実施させることだ。
 1996年の日米特別行動委員会(SACO)で、パラシュート降下訓練は伊江島補助飛行場で実施することになった。だが、米軍は伊江島補助飛行場の滑走路の状態が悪いことを理由に、昨年12月から連続して嘉手納基地で訓練を実施している。
 5カ月連続となった19日の降下訓練を実施したのは、アラスカ州の空軍基地所属の外来機だった。昨年12月以降の訓練で外来機が使用されるのは初めてだ。嘉手納での降下訓練には県や周辺自治体が再三、中止を申し入れている。なのになぜ米本国の所属機がわざわざ沖縄に来て、本来の場所ではない「例外的」な施設で訓練するのか。
 沖縄の基地負担軽減というSACO合意の原点がほごにされている。にもかかわらず日本政府は米軍の行為を追認し、「例外的」という限定条件の解釈さえもずるずると後退させている。周辺自治体への背信行為だ。
 嘉手納町議会は3月、沖縄防衛局や外務省沖縄事務所に全議員で出向き、繰り返されるパラシュート降下訓練に抗議した。通常の要請は議長と基地対策特別委員会の委員のみだが、全員で行動することで強い反対姿勢を示すという異例の意思表示だ。
 嘉手納基地では、外来機の飛来増や武器搭載可能な無人機の配備、元駐機場に防錆(ぼうせい)整備格納庫を新たに建設する計画など基地機能が強化されている。住民の声をないがしろにして、危険と負担を強いることが続いてはいけない。
 本来は伊江島であってもパラシュート降下訓練は容認できるものではない。伊江島では基地外の民間地に降下する事故を繰り返している。伊江島補助飛行場ではF35Bステルス戦闘機などの飛来や訓練が増加し、騒音がひどくなっている。滑走路の改修後はさらに運用が激化し、危険が増す恐れがある。
 空から兵士や物資を投下するパラシュート訓練は、狭い沖縄のどこにも実施の余地はない。この際、訓練の国外移転を図るべきだ。