<社説>南城市長セクハラ疑惑 市と議会は実態解明せよ


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<社説>南城市長セクハラ疑惑 市と議会は実態解明せよ
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 古謝景春南城市長のセクハラ疑惑を受け、南城市議会の特別委員会が始めた職員アンケートで、約80人の会計年度任用職員や業務委託で働く人へのアンケート配布が見送られていた。市議会事務局は「市職員が職場にいるこども園を除き、市庁舎外に勤務する人は対象外にした」としている。

 勤務場所が市本庁舎でないからといって会計年度任用職員や業務委託の職員をアンケートの対象から外す必要はあるのか。きっかけは市長のセクハラ疑惑だったとしても、アンケートの目的は、南城市役所で働く全ての人たちが職場でハラスメント被害を受けていないかを調査するためのものだ。
 だからこそ、南城市の正職員、会計年度任用職員、業務委託で働く職員の合計数約600人分のアンケート用紙を市議会は用意していたはずである。
 アンケートの対象から外された職員の一人は「一人でも回答者を減らしたいのだろう」と対応を批判した。南城市のために働く全ての人たちが職場で不利益を被っていないか丁寧に調査する意思があるなら、いたずらに対象を狭めるような対応をしてはならない。
 今回のセクハラ疑惑を巡っては、胸を触られたと被害を訴える女性と、「肩をたたいただけだ」という市長の主張は対立している。女性は損害賠償を求めて提訴し、裁判で事実関係が争われる予定だ。
 疑惑の解明に向けた動きは市議会でも出ている。野党・中立・無会派の市議8人は市役所内のハラスメント実態を調査する第三者委員会の設置を求める決議を提出するため、臨時議会の招集を市長に求めた。ところが、市長は臨時会招集を拒否した。議員らは市長に代わって中村直哉議長にも臨時会を求めたが、議長は「地方自治法の招集要件に当たらない」との理由で市長と同様、招集を拒否した。
 これで市民は納得するだろうか。市長は疑惑について、市民の代表が集まる議会で説明すべきである。議長も市民のために実態解明に積極的であるべきだ。執行機関である市を監視するという議会の役割を放棄してはならない。
 市長のセクハラ疑惑を巡る市当局や市議会の一連の対応を見ていると、実態解明に後ろ向きな姿勢が目立つ。
 地方自治体は住民が首長と議員を選挙で選ぶ二元代表制を取っている。両者は互いをけん制し、緊張関係を保ちながら首長は行政を運営、議会はそれを監視する。南城市の現状は緊張関係というよりも、もたれ合いに近いのではないか。
 実態解明や被害を訴える女性への対応がおざなりになれば、市民は安心して行政を任せられない。利害関係に左右されない第三者による調査を実施すべきだ。実態解明を進め、疑惑を持たれない体制を構築しない限り、市民の不信感は払拭できない。