<社説>衆院3補選自民全敗 政治とカネ 国民の信問え


<社説>衆院3補選自民全敗 政治とカネ 国民の信問え
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 衆院の3補欠選挙で自民党が全敗した。東京15区と長崎3区は自民現職の不祥事で候補者を立てられず不戦敗で、与野党対決となった島根1区でも大敗した。裏金問題による逆風が最大の要因だが、旧統一教会問題を含め積み重なる自民党への不信感の結果だ。自民党の存在意義が問われる事態である。

 早速、岸田文雄首相の求心力の低下、解散総選挙や自民党総裁選への影響など、政局に焦点が当たっている。しかし政局より、この国会で政治とカネの問題に決着をつけられるかどうかがより重要だ。
 自民党は結局、裏金問題の解明をしなかった。この仕組みを誰がいつ始めたのかは明らかにされず、裏金の使われ方も不明だ。第三者委員会による調査はもとより国会での証人喚問も見送った。にもかかわらず曖昧な基準で大甘な処分を決定した。
 政治資金規正法改正の自民党独自案は、政治資金や政策活動費の透明化、企業・団体献金の是非など、指摘されてきた課題を避けている。岸田首相にやる気はなく、自民党自体に信頼回復をしようという決意は見えない。
 岸田首相は2021年9月の総裁選に勝利し、首相に就任してすぐに解散総選挙を断行して勝利した。25年参院選まで「黄金の3年間」を得たはずだったが、22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに自民党と旧統一教会の深い関係が大問題となった。
 これもきちんと解明することをせず、その後、旧統一教会絡みで細田博之衆院議長や盛山正仁文部科学相の問題が出た。細田氏は病気を理由に議長を辞職し、盛山文科相への辞任要求は突っぱねた。説明責任を果たさないまま細田氏は死去し、島根1区の補選となった。これらの不信の積み重ねが今回の選挙結果につながったことは間違いない。
 残念なのは、東京15区40・70%、長崎3区35・45%、島根1区54・62%と、3選挙区とも投票率が大きく下がり、過去最低となったことだ。政治不信の深まりで、国民に無関心と諦めが広がっている。この流れをどう止めるか、与野党ともに問われている。
 安倍首相、菅義偉首相、岸田首相と続く政権は、憲法解釈の変更で集団的自衛権行使容認に踏み込み、戦争体制に向かう法律を次々と作った。大軍拡政策を展開し、武器輸出に道を開き、戦争の準備を進めている。与党だけの議論で閣議決定し、国会で追及されても空疎な答弁を繰り返してきた。経済政策や少子化対策の財源問題も同様で、国民の政治不信を深めてきた。
 自民党が多数を占める国会で、あるべき政治資金規正法改正ができるとは考えられない。同法改正を第一の争点に、国民に信を問うべきではないか。総選挙では、この間の外交・防衛政策や経済政策の是非、自公政権の総括も行い、国民の諦めと無関心の流れを反転させるべきである。