<社説>嘉手納パラ訓強行 「例外的」は通用しない


<社説>嘉手納パラ訓強行 「例外的」は通用しない
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 米軍嘉手納基地を運用する米空軍第18航空団の司令官ニコラス・エバンス准将が、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練について「当分、毎月1回行い、次回は5月末を予定している」と明言した。

 嘉手納基地でのパラシュート降下訓練は日米特別行動委員会(SACO)合意に反している。県や地元自治体は再三、実施しないよう求めてきた。同盟国との約束を破り、県民の安全をないがしろにすることに悪びれる様子もない。
 米軍の傍若無人は度が過ぎていないか。合意を盾に中止を求めるわけでもなく、米軍の言いなりに訓練を容認する日本政府の対応も理解しがたい。国民の安全や安心を脅かす主従関係を続ける両政府に断固として抗議する。
 パラシュート降下訓練は1996年のSACO最終報告で読谷から伊江島へ移転された。しかし、日米両政府は2007年に「嘉手納基地を例外的な場合に限って使用」と追加合意し、基地負担の軽減よりも米軍の運用を優先する抜け道をつくった。
 その結果として、嘉手納基地での降下訓練が繰り返され、昨年12月からは5カ月連続で実施された。米軍は、伊江島補助飛行場の滑走路の状態悪化を嘉手納基地での訓練実施の理由に挙げている。米側は改修工事を進めているが、完了まで1年半程度かかると見込まれている。
 木原稔防衛相は「嘉手納で定期的に行われる訓練ではない」と述べるが、米軍側は月1回訓練を実施すると明言しており、矛盾が生じている。「例外的な場合」という言い訳は全く通用しない。
 なし崩し的に嘉手納基地で訓練を強行する米軍の横暴な態度と同様、日本政府の不作為も許されない。
 嘉手納基地は、住宅地など人の行き来のある民間地に隣接する場所もある。県民が巻き込まれる事故が起きたとしても、日米地位協定上、公務中の事故として扱われるため日本側の捜査当局に調査権はなく、原因究明や再発防止を徹底させることはできない。
 読谷補助飛行場で米軍のパラシュート降下訓練が実施されていた当時、兵員が目標地点に降下できず、民家や農地などに誤って降下することがたびたび発生した。1965年6月には、小型トレーラーが民家に落下し、小学生の女児が圧死する事故が起きている。こうした悲劇を繰り返さぬよう、県や近隣市町村は嘉手納基地での降下訓練の中止を強く訴えているのだ。
 嘉手納基地だけでなく伊江島やうるま市の津堅島沖で実施するパラシュート降下訓練に対しても県民は強い抵抗感を抱いている。米国と「対等な同盟関係」を掲げるならば、日本政府は「毎月1回」の訓練を公言した米空軍第18航空団の司令官に抗議し、訓練中止を求めるのが本来の姿だ。日米両政府は日米合意違反の訓練を今すぐやめるべきだ。