<社説>こどもの日 子の権利は地域の未来だ


<社説>こどもの日 子の権利は地域の未来だ
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 きょう5日は「こどもの日」。国民の祝日法は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」と定める。国連の子どもの権利条約でも、子どもは守られる対象であるだけでなく、権利を持つ主体であることを明確にしている。

 次の時代を切り開く子どもたちの権利を守ることは、地域の未来を守ることだ。一人の人間として向き合い、健やかな成長に寄り添いたい。
 コロナ禍が直撃した家計に物価高騰が拍車を掛け、子どもたちを巡る状況は厳しさを増している。
 2022年度の沖縄子ども調査では、19年度の調査と比べて困窮層の割合が5.9ポイント上昇し、経済的に厳しい世帯が増えた。低所得層の生徒ほどきょうだいの世話や家族の介護・看病をする時間が長く、保護者とともに抑うつ傾向が高かった。
 調査ではヤングケアラーと貧困が重なる時、「子どもの権利」が大きく侵害される可能性があるとした。
 今国会で、児童手当の拡充を柱とした少子化対策関連法案が審議されている。将来の不安なく安心して子育てができるように、経済的な手だてを講じることは喫緊の政治課題だ。しかし、公的医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金」の創設は、現役から高齢者まで幅広い世代に負担を広げる。結局、所得の低い人ほど負担が重くなってしまう。
 経済格差を解消しなければ少子化対策も意味をなさない。子育て支援、所得の改善、物価高対策に大胆に財源を充てることだ。歯止めなく膨張する防衛費を見直せば、国民に新たな負担を求めることなく財源を捻出できる。
 子育ての負担軽減には、育児は女性の役割という固定観念が根強くあることも改めないといけない。総務省の調査によると、6歳未満の子どもがいる共働き世帯では女性の育児時間が1日に3時間24分なのに対し、男性は1時間3分にとどまる。
 性別に関係なく仕事に就き、社会で活躍していくことが当たり前の時代に、女性だけが仕事と家庭の両立を求められるのはあまりに時代錯誤であり、不公平だ。男性の育児参加を広げることで、子育てしやすい環境や制度の議論がより進むはずだ。
 若年妊産婦が社会の中で孤立しないための支援も重要だ。沖縄は10代で出産する女性の割合が全国に比べて高い。10代での出産は周囲に相談しにくかったり、パートナーや家族の支援が得られなかったりする場合がある。
 経済力が乏しい若年世代が孤立すると、家庭内のドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待、育児放棄につながるリスクが高まる。予期せぬ妊娠で学業を諦め、貧困の連鎖を招いてしまうことも防がなければならない。
 子どもたちの権利を守る、大人の決意が問われている。