<社説>大阪・関西万博 開催意義の説明が必要だ


<社説>大阪・関西万博 開催意義の説明が必要だ
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 どれほどの国民が万博に期待しているのか。このままの規模と開催時期で進めてよいか立ち止まって考えたい。

 来年4月の大阪・関西万博の開幕まで1年を切ったが、盛り上がりに欠けている。前売りチケットの売れ行きは目標を大きく下回っている。国民の関心は万博に向いていないのが実情である。
 その理由の一つとして、1月の能登半島地震がある。発生から4カ月を過ぎた今も4600人余が避難生活を送っている。このような状況で万博開催を迎えていいのか、国民は疑問を抱いている。
 今年2月の共同通信世論調査では、万博を「延期するべきだ」は27%、「計画通り実施」が27.1%、「時期は変えず規模縮小」は26.7%で、半数以上が延期や規模縮小を求めた。
 政府内でも、高市早苗経済安全保障担当相が1月末の講演で、能登半島の復興を優先し、万博開催を延期するよう岸田文雄首相に進言したことを明らかにしている。
 岸田首相は昨年10月の所信表明、今年1月の施政方針で、万博を「オールジャパンで進めていく」と述べた。
 しかし、「オールジャパン」で取り組むべきは能登復興だという世論が存在していることを政府は無視してはならない。能登の復興方針と共に万博の開催意義を説明する必要がある。理解が得られなければ開催の是非、時期や規模の見直しを検討すべきだ。
 能登半島地震の発生前から万博に対する世論は厳しかった。人件費や資材費の高騰によって会場整備費は当初比1.9倍、運営費は1.4倍に膨らんでいることへの不満である。昨年11月の共同通信世論調査では、万博開催は「不要だ」と答えた人は68.6%に上っている。
 さまざまな課題が横たわる中で政府が万博開催を目指す以上、国民の理解と協力を得なければならない。しかし、政府の情報発信は乏しいのではないか。
 健康や長寿、持続可能な社会の創設をうたった「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマはどれほど理解されているだろうか。万博後の関西圏発展の施策として打ち出されているカジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)と万博テーマとの整合性も問われる。
 戦後の高度経済成長期に開催された1970年の大阪万博は「人類の進歩と調和」をテーマに掲げていた。日本万国博覧会協会テーマ委員長を務めた茅誠司東京大名誉教授は「科学技術の進歩は人類を幸福にしたことは間違いないが、必ずしも調和されているとは考えられない」という問題意識がテーマの背景にあることを1966年6月の国会で証言している。
 国民の世論が割れる中で万博の存在意義そのものが問われている。今回の万博では何を目指すのか、政府は原点に立ち戻って説明してほしい。