<社説>恩納村が通学費補助 生徒の学び支える施策だ


<社説>恩納村が通学費補助 生徒の学び支える施策だ
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 恩納村は、村内に住む高校生の通学費の負担軽減に向け、独自の通学費補助事業を実施する。県の事業対象から外れた生徒が対象で、通学距離に応じて助成額を決める。村は本年度一般会計予算に事業費2160万円を計上した。対象者は300人前後を見込んでいる。

 高校がない恩納村では、中学校を出た生徒はうるま市の石川高校や読谷村の読谷高校など村外の高校に通うため、通学費負担が課題となっている。村仲泊から約4キロ離れている石川高校に通学する場合のバス定期運賃は1カ月で7430円を要する。仲泊から名護高校に通学すると1カ月で2万8680円にも上る。かなりの負担だと言える。
 村の通学費補助事業は通学費に悩む家庭にとっては朗報である。村事業は高校生のいる家庭の負担軽減、通学費負担を理由に退学や転学する生徒を未然に防ぐことを狙いとしている。
 村単独の通学費補助事業は、家庭支援だけではなく、将来の村づくりを支える人材、さらには沖縄の次代を担う人材の育成につながるものだ。教育への投資は未来への投資となる。恩納村の取り組みを評価したい。他の市町村も参考にしてほしい。
 県内では「子どもの貧困」が注目される中で、家計を圧迫する通学費負担の重さが指摘されてきた。
 県が実施した2016年度沖縄子ども調査・高校生調査では低所得者層の生徒がアルバイトをすることで通学費や家計を支えている実態が分かっている。22年度の同調査では進学高校を選択する際、通学費負担を重視したかを保護者に聞いており、低所得者層の50%近くが通学費負担を「重視した」と回答している。
 通学費の負担を考慮し、進学高校を決めなければならない家庭がある。進学後も通学費を確保するため、アルバイトに励む生徒がいるのである。通学費負担が生徒の進路や、進学後の就学状況に影響を与えていることを重く見る必要があろう。
 県は20年度から住民税非課税世帯や児童扶養手当の受給世帯で県内の高校、高専に通う生徒を対象にバス・モノレール通学費の無料化を実施している。対象生徒を年々拡大し、通学費負担の軽減を図ってきた。22年度の支援認定数は5090人だった。
 それでも十分とは言えない。県の高校生調査では、課税世帯でも通学費が家計を圧迫しているとして、事業の拡充を求める声が寄せられている。恩納村の事業はこのような声に応えるものである。
 4月以降、値上げが続くバス各社は、子育て世代の家計費負担を考慮した通学定期運賃(5割引き)を設定している。生徒の学びを支えるため、県や市町村行政も含め、通学費支援の新たな方策を議論する必要があろう。恩納村の取り組みがきっかけとなることを望みたい。