<社説>嘉手納に大型無人機 際限ない負担増拒否する


<社説>嘉手納に大型無人機 際限ない負担増拒否する
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 米海軍が嘉手納基地に大型の無人偵察機MQ4トライトン2機を今月配備すると、防衛省が県などに通知した。玉城デニー知事は13日、配備撤回を求めていく考えを示した。「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)も総会で対応を協議した。嘉手納基地周辺の負担は元々限界を超えている。増え続ける危険と負担は拒否するしかない。

 トライトン配備が通知されたのは10日だった。その日、玉城知事は木原稔防衛相に会い、昨年配備された無人機MQ9の配備撤回を含め嘉手納基地周辺の負担軽減を要請したばかりだった。知事は翌日、「同じ日に説明するのは極めて非常識ではないか」と批判した。沖縄側の要請は聞き流せばいいという態度に、知事が憤るのは当然だ。
 昨年から少なくとも7機が配備されているMQ9は、全長約11メートル、主翼幅が約20メートルある。前配備地の鹿児島県の海上自衛隊鹿屋航空基地では、オーバーラン事故を起こしている。今度のトライトンの主翼幅は2倍の約40メートルと大きく、機数が増えることで、事故の危険も増す。偵察活動が偶発的な戦闘につながる可能性も否定できない。
 嘉手納基地では昨年、防錆(ぼうせい)整備格納庫の移設が決まった。外来機が爆音をまき散らし、パラシュート降下訓練も常態化し、周辺の負担増は際限がない。地元への説明はおざなりで、常に性急で強圧的だ。沖縄には強引に押し付けて構わないと、日米両政府は考えているのだ。
 沖縄を切り離して日本が独立を回復した1952年のサンフランシスコ講和条約発効から72年が過ぎた。沖縄が日本に復帰した72年5月15日から明日で52年だ。日本の「独立」とは何だったのか、沖縄の「復帰」とは何だったのか改めて問わねばならない。
 講和条約調印の日に、吉田茂首相が1人で日米安全保障条約に調印した。日本の独立回復は、米国が日本全土を軍事利用できる自由使用の権利を担保することに主眼があった。52年前の復帰は、「施政権」のみを日本に返還し、沖縄の軍事的自由使用権は固守した。さらに米軍を補完する形で自衛隊を配備した。
 その後、日米軍事一体化を段階的に進め、近年、急速に自衛隊増強を図っている。他国の軍隊に自由使用を許し、国民生活を脅かしながら戦争準備を進める日本は、主権国家と言えるのだろうか。
 沖縄だけではない。広島県では、海上自衛隊呉基地に隣接する製鉄所跡地130ヘクタールを防衛省が一括購入して「多機能な複合防衛拠点」を整備する計画が持ち上がっている。「軍都」復活の動きに反対運動が起きている。
 南西諸島を前線として戦争準備をしているのが、今の動きだ。全国の「拠点」が標的になり、戦場になり得る。戦争を食い止めるために、全国的運動にすることが必要だ。