<社説>南城市セクハラ疑惑 第三者委で実態解明を


<社説>南城市セクハラ疑惑 第三者委で実態解明を
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 実態解明への一歩とすべきだ。被害の訴えや市民の不信に背を向けてはならない。

 古謝景春南城市長のセクハラ疑惑について職員アンケートを実施した市議会特別委員会は、市役所内のハラスメントに関する第三者委員会の設置を市側に求めることを決めた。アンケートで「古謝市長からキスされた」など具体的な回答が複数あったことから、特別委は第三者委の設置が必要だと判断した。

 昨年12月に疑惑が明るみに出てから半年を要した。慎重を期す事案であったとしても、時間がかかりすぎたと言わざるを得ない。その分、実態解明が遅れてしまった。この間、被害を訴えた女性は心痛を強いられたはずだ。

 これまで市議会は実態解明には後ろ向きだった。百条委員会の設置を否決し、第三者委員会設置を求める市民の陳情の採択を先送りにした。「情報漏えい」を理由にアンケートの公表を遅らせた。議会はセクハラ疑惑にどう向き合ってきたか省みてほしい。

 今回の決定を市当局は真摯(しんし)に受け止めなければならない。市議会から正式に第三者委設置の要請を受け次第、早急に作業を進めるべきだ。第三者委の設置に応じない姿勢を保ってきた古謝市長も、特別委のアンケートで被害を訴える複数の回答があった以上、議会の要請を拒んではならない。

 疑惑が公になって半年、南城市は実態解明には消極的であるばかりでなく、問題をこじらせた。事態を長引かせた最大の原因といえる。

 疑惑に関する市議会での質疑に対し市側は「これまでハラスメントの申告はない」などと答弁し、市議会有志による職員の相談窓口設置の取り組みとも距離を置いた。古謝市長は疑惑を否定する一方で、被害を訴える女性の個人情報を自身のSNSに投稿するなど不可解な行為を続けた。古謝市長は第三者委設置に関する臨時会の招集を拒否している。

 このような市側の態度を南城市民は厳しく見ていたであろう。セクハラ被害を訴えている現職の職員を萎縮させたはずである。市議会特別委の第三者委設置要請をきっかけに、市はこれまでの対応を根本から改めるべきである。

 市政トップにまつわる疑惑の解明は困難が伴うであろう。しかし、いま市に求められているのは、自浄作用を最大限発揮することで、セクハラ被害の訴えに誠意をもって説明するとともに、市民の疑問や不信に対応することである。事実の隠ぺいや問題解決の先送りをしてはならない。

 第三者委の設置に向けて委員人選などの作業を進める必要がある。公平・公正な調査を確保するための人選を求めたい。同時に調査によって明らかになったことは可能な限り公表してほしい。

 そのことが今回の疑惑によって失われた市民の信頼を回復する最低限の手だてである。