<社説>県議選与党大敗 新基地阻止で対抗策示せ


<社説>県議選与党大敗 新基地阻止で対抗策示せ
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 任期満了に伴う沖縄県議会議員選挙(定数48)は県政野党・中立が議席の過半数を確保し与党は大敗した。自民を中心とした勢力が多数を占めるのは16年ぶりである。

 米軍普天間飛行場の返還に伴う辺野古新基地建設に賛成する議員と反対する議員は同数となった。玉城知事にとって大きな痛手だ。新基地建設を強行する政府への新たな対抗策が求められる。

 稲嶺恵一県政時の2000年、04年の県議選で保守与党が多数を占め、辺野古移設を容認する稲嶺県政を支えた。仲井真弘多県政時の08年の県議選では辺野古移設に反対する野党・中立系が多数を占めた。その後の県議選でも移設反対派が多数を確保してきたが、今回は移設を容認する自民の伸長を許した。

 県知事選や県民投票で新基地建設反対の意思が示されてきたが、政府は建設を推し進めてきた。設計変更を巡る代執行訴訟に勝訴した政府は今年1月、大浦湾側に存在する軟弱地盤の改良に向けた工事に着手している。

 政府の強硬姿勢を前に、有権者の一部で諦め感が広がった結果が今回の選挙結果に表れたとの見方はできよう。経済・景気・雇用の分野に有権者の関心が移ったとも言える。しかし、沖縄の民意が完全に新基地容認に転じたと政府が捉えるならば早計だ。

 新たな県議会の会派で辺野古新基地建設を容認するのは自民だけである。中立を掲げる公明の姿勢は普天間飛行場の「県外・国外移転」である。中立の維新も移設容認だが現在の計画を全面的に受け入れているわけではない。

 今回の県議選の結果を持って、県民が新基地建設を承認したと判断することは沖縄の民意を都合よく解釈するようなものではないか。そもそも大浦湾側の工事は難航が予想され、具体的な完成が見越せないのが実情だ。

 政府が急ぐべきは現在の普天間飛行場の危険性除去である。「唯一の解決策は辺野古移設だ」という姿勢に固執し、新基地建設を続けることは危険性の放置でしかないことを政府は認識すべきだ。

 玉城県政も今回の選挙結果を重く受け止めるべきだ。政府との法廷闘争で県敗訴が続き、失望する県民もいたであろう。新基地建設の民意を糾合する「新たなカード」を提示する必要性に迫られていることを忘れてはならない。

 今選挙を玉城県政の中間評価と位置付けるならば、有権者は厳しい評価を示したと言える。県土木建築部所管の二つの整備事業特別会計で違法な赤字状態が明るみに出る不祥事が続いた。国との対決姿勢に疑問を抱く有権者もいよう。玉城知事は丁寧な説明が求められる。

 沖縄振興の在り方や自立経済の確立、物価高騰や人手不足、「子どもの貧困」など課題は山積している。県議会と県当局は車の両輪として諸課題の解決に尽くしてほしい。