<社説>県議選投票率最低 主権者教育で反転可能だ


<社説>県議選投票率最低 主権者教育で反転可能だ
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 投票率の低下が止まらない。沖縄県議会議員選挙の投票率は45・26%と、初めて50%を割った前回2020年の選挙を1・7ポイント下回った。2回連続の最低更新だ。半分以上の有権者が棄権するという、民主主義の土台を揺るがす深刻な事態である。反転させるには、投票で社会がよくなるという実感を若い世代に持たせることが必要だ。

 ほとんどの選挙で投票率が低下している。日本復帰後の県議選では、1976年の82・28%をピークに低下傾向が続いている。前々回2016年は上昇した。辺野古新基地阻止を目指す翁長雄志知事を支える「オール沖縄会議」が誕生しており、新基地問題が争点になった。それでも投票率は0・82ポイント上がっただけの53・31%だった。

 全国的に、若い世代ほど投票率が低い。県選挙管理委員会は08年6月の県議選から22年7月の参院選までの国政選挙、知事選、県議選の年齢別投票状況をホームページに掲載している。22年参院選では、最も高い70代が66・84%なのに対し、最も低い20代は34・88%である。4年前の県議選は、70代63・47%に対し20代32・12%だった。20代は3人に1人しか選挙権を行使していない。これでは、時代が進むとともに投票率が下がっていくのは必然である。

 沖縄の選挙は「基地か経済か」と言われてきたが、世代間で関心のある政策にもばらつきがある。22年8月の知事選前の本紙世論調査では、70代以上は基地を重視するが、50代以下は経済重視、60代は基地と経済が拮抗(きっこう)した。一方、20代では2割が「教育・子育て」を重視していた。

 23年6月に報じられた熊本博之・明星大教授らの研究グループによる世論調査では、日米安保体制強化を望む割合が18~34歳の49%、35~49歳で43%に及んだ。自衛隊強化を望むのは18~34歳、35~49歳とも47%に達し、「基地反対運動は無意味」という設問に18~34歳の55%が賛同した。基地・安保問題に関して、若い世代に諦めが広がっていると指摘された。

 今月、沖縄大学で行われた「主権者教育」の講義で実施した事前アンケートでは、「選び方が分からない」「政治の話をしてはいけない雰囲気がある」などの回答が多くあった。しかし講義後には「自分で社会や国を変えられると思う」という回答が大きく増えたという。若い世代の諦めと無関心を変える契機が、中学・高校・大学での主権者教育にあるのではないか。

 主権者教育と「選挙リテラシー」には、報道機関にも役割がある。候補者アンケートを基に、有権者が自分の意見に近い候補者や政党を選べるマッチングアプリを選挙ごとに作製して提供するなどが可能ではないか。「若者の参加でよりよい社会ができる」というメッセージを若い世代に届けることで、投票率を上向きにできるはずだ。