<社説>改正政治資金規正法 これで幕引きではない


<社説>改正政治資金規正法 これで幕引きではない
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 「政治とカネ」に向けられた国民の厳しい批判を本当に受け止めていたのか。実効性のない「ザル法」で信頼を取り戻せるはずがない。

 19日に参院で可決、成立した改正政治資金規正法は、抜け穴だらけの法案を自民が数の力で押し切った。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を反省して膿(うみ)を出すはずが、「改革」の名に値しない小手先の見直しに終わった。政治不信は一層深まった。

 岸田文雄首相はこれで裏金事件の収束を図る腹積もりなのかもしれない。しかし、形だけの制度改正での幕引きを許すわけにいかない。裏金事件の真相を解明し、抜本的な政治改革が必要だ。

 改正政治資金規正法は2026年1月に施行する。政治資金収支報告書の「確認書」交付を国会議員に義務付けるほか、政治資金パーティー券購入者名の公開基準を「20万円超」から「5万円超」に引き下げた。

 だが、パーティーを小分けにして1回当たりの金額を抑えれば氏名の公開を回避できるなど、規制を逃れる余地が残る。政策活動費の使途を監督する第三者機関なども概要を示しただけで、設置時期や権限は曖昧だ。多くの詳細が先送りされ、政治資金の透明化につながる保証がない。

 立憲民主党などが訴えた企業・団体献金の禁止には最後まで触れなかった。不透明な政治資金である政策活動費は温存した上で、10年後の領収書公開を検討するとした。だが、10年後では規正法の時効である5年と整合性が取れない。公開されても黒塗りの可能性さえある。

 1994年の政治資金規正法の改正では、政党交付金を創設する代わりに、5年後の企業・団体献金の禁止を付則に盛り込んでいた。だが、政党や政党支部を企業・団体献金の受け皿とする抜け道が残り、公金と献金の二重取りが続いている。

 企業・団体献金を禁止せず、政治には資金集めが必要と言うのであれば、一体何に資金が必要なのか、使途を透明にして国民に全て見えるようにしなければならない。

 岸田首相が修正を受け入れたのは公明党と日本維新の会の要求だけだった。その維新でさえ、月額100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革をほごにされたと反発し、参院で反対に回った。

 政治資金の在り方は全ての国会議員に関わり、与野党の別なく幅広い合意が必要だ。特に自民党の金権体質が問われているだけに、自らに都合のいい改正にならないよう律する必要がある。

 岸田首相は「火の玉」になって信頼回復に取り組むと言っていた。

 そうであるならば国会会期を延長して政党間で協議し、国民の理解を得る改革を追求するべきだった。岸田首相の言葉の空虚さと指導力の欠如があらわになった。