<社説>南城市アンケート公表 証言者の安全確保徹底を


<社説>南城市アンケート公表 証言者の安全確保徹底を
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 古謝景春南城市長のセクハラ疑惑を巡り、市議会特別委員会が実施した職員アンケートの結果が21日、ようやく市ホームページで公表された。市は議会が要請した第三者委員会について、18日の議会答弁で設置する姿勢を示した。

 半年にわたって混迷を深めてきた問題が、ようやく前向きな形で動き出した。今後、第三者委員会がどのように実態を解明し、課題解決への道筋を示すのか見守りたい。

 第三者委員会について、琉球大学ハラスメント相談支援センター長で被害者学が専門の矢野恵美氏が、メンバーを市の関係者が選ばないこと、アンケートの回答者の「犯人捜し」を禁止することを提言している。全ての関係者は、証言者の安全確保を徹底しなければならない。

 アンケートでは市長のセクハラは9件あり、極めて悪質な内容だ。「上司に相談しても放置されている」「報復が頭によぎる」などの記述は、市当局にも大きな問題があることを示している。

 市長はこれらのセクハラを全面否定している。第三者の調査がない中、断定はできない。しかし、市長の言動は許容できない。問題の発端になった、市長車の元運転手の女性に対する問題で、議会やSNSで個人情報を暴露し、脅しとも取れる発信を続けている。市議会の特別委員会委員長がSNSの投稿を削除するよう求めたが拒否した。これらは明らかにパワハラであり、人権侵害だ。第三者委員会の調査に際して、市長のこのような行為をやめさせることを大前提にすべきだ。

 市当局の問題も深刻だ。元運転手の女性のセクハラの訴えに対し、市長の意向を受けて第三者による調査も賠償も拒否した。そして、無断で名前・住所を記入した書類を作成し、業務委託契約を解除した。裁判で決着するよう促す発言もしていた。女性は市長と市に賠償を求めている。

 市が2022年11~12月に市職員を対象にしたアンケートで「セクハラを受けたことがある」15・2%、「パワハラを受けたことがある」8・8%だった。しかし、市は改善の努力をせず、相談窓口に申告する職員はいなかった。

 この問題が長引いている原因は市議会与党にもある。百条委員会設置を否決し、市民の陳情採択を先送りにして第三者委員会の設置を遅らせてきた。アンケートについても「情報漏えい」を理由に議員を懲罰し、公表を遅らせた。市長をかばったと見られてもおかしくない。

 前市長・前副市長のパワハラを指摘する内容もあった。疑惑追及に動いた野党議員への批判もあった。職員の中にもさまざまな思いがありそうだ。これらを解きほぐしながらの事実解明が第三者委員会に求められる。

 第三者委員会の調査をきちんと実施・公表し、早急に改善策を打ち出さなければ、失墜した信頼は回復できない。