<社説>米兵が不同意性交 やまぬ性暴力、米軍撤退を


<社説>米兵が不同意性交 やまぬ性暴力、米軍撤退を
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 許しがたい事件が起きてしまった。米軍基地あるがゆえの非道がまたも繰り返されたのだ。県民は基地から派生する人権侵害にいつまで耐え続けなければならないのか。


 昨年12月、県内に住む16歳未満の少女を車で誘拐し、自宅で同意なくわいせつな行為をしたとして、那覇地検がわいせつ目的誘拐と不同意性交の罪で米空軍兵長の男を起訴した。起訴の日付は3月27日である。


 今月23日に糸満市摩文仁で開かれた沖縄全戦没者追悼式における平和宣言で玉城デニー知事が「広大な米軍基地の存在、米軍人等による事件・事故、米軍基地から派生する環境問題など過重な基地負担が、今なお、この沖縄では続いています」と述べたばかりだ。それからわずか2日後、県民は過酷な現実を突き付けられた。


 私たちは少女の尊厳を傷つけた米兵に強く抗議する。日米両政府は被害者の心的ケアを含め、全面的に補償すべきだ。そして、県民の人権を踏みにじる事件を抑止できない限り、全ての米軍は沖縄から去らなければならない。


 ふに落ちないことがある。25日の記者会見で林芳正官房長官は、3月27日の起訴を受けて岡野正敬外務事務次官からエマニュエル駐日米大使に遺憾の意を申し入れたことを明らかにした。少なくとも政府はその日までに事件を把握しているのだ。県は報道によって事件を知ったのである。


 このような重大事件がただちに県に通報されなかったのはなぜか、政府の関係機関は説明すべきだ。今月は県議選があった。何らかの政治的意図から県へ連絡しなかったのであれば言語道断だ。


 県民は米軍の蛮行に長年傷つけられてきた。米兵の性暴力は米軍が上陸した1945年から始まった。米軍が設置した民間人収容所などで女性を被害者とした事件が多発したのである。


 女性の性被害は72年の施政権返還後も変わることがなかった。戦後一貫して米軍の性暴力は続いてきた。これ以上、米軍駐留による人権侵害を許すわけにはいかない。


 全戦没者追悼式に出席した上川陽子外相は21日の会見で「沖縄の皆さまには大きな基地負担を担っていただいている。沖縄の基地負担軽減は政権にとって最重要課題だ。引き続き取り組んでいきたい」と述べている。


 外務省はこの発言を単なる口約束に終わらせてはならない。厳重に抗議し、再発防止策の確立を求めるべきだ。犯罪抑止に向けた兵員教育の徹底などやるべきことは多い。


 手始めに米兵らの外出・基地外飲酒を制限する勤務時間外行動指針(リバティー制度)の強化が必要だ。2022年12月にリバティー制度を緩和して以降、米軍事件が多発傾向にあった。


 当然、主権国家として日米地位協定の抜本改正にも取り組まなければならない。