<社説>米兵の性犯罪続発 政府は県民守る責務負え


<社説>米兵の性犯罪続発 政府は県民守る責務負え
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 異常と言うほかない。卑劣な犯罪の頻発は言語道断だ。これが県民に知らされなかったことも理解に苦しむ。

 政府は、基地の重圧を強いられる沖縄県民の生命・安全を守る責務を負うべきだ。しかし、その責務が認識できていない。個別の事案についてなぜ情報の共有が遅れたか、明確に説明すべきだ。

 ことし5月、米海兵隊員の男が女性に性的暴行し、けがを負わせたとして不同意性交致傷の容疑で県警に逮捕され、今月17日に同罪で起訴されていた。

 昨年12月に発生した事件で米空軍兵がわいせつ誘拐、不同意性交の罪で起訴されていたことに続いての事件判明だ。許し難い事態である。

 被害者、その家族が心身に負った深い傷へのケアが丁寧に行われ、迅速に補償されることを最優先に求めたい。事件後も被害者が理不尽な状態に置かれることがあってはならない。責められるべきは犯罪を起こした当事者とその行為そのものだ。

 あまりに情報統制が過ぎると言わざるを得ない。明らかになった2件の事件発生は県に報告されるべきだ。遅くとも起訴時点での情報提供があるべきだった。米軍に綱紀粛正を求め、警察による警戒を強めるなど再発防止の対策を取ることができたはずだ。


 県民は犯罪の頻発を知らずに日常を送ってきた。事件発生の一報は防犯意識を一定程度高めることにもなる。今回の連続発生は全く情報を出さず、対策が取られなかったことも影響してはいないか。

 日米合同委員会合意によって、日本人やその財産に実質的な損害を与える可能性のある事件などについては米側から日本側当局に通報する義務がある。地元社会に与える影響の大きさや再発防止に資する点を鑑みてのことだろう。

 県民に知らせる必要があるとの認識は各捜査機関にあったのか。広報の在り方について省庁間で責任を押しつけ合うような言動もみられる。どこを向いて仕事をしているのか。合同委員会合意に基づき、速やかに事件の事実関係が通報され、関係機関で共有することを強く求める。

 被害者保護のため公表できない内容もあろう。残念ながら、性犯罪が起こるたびに被害者を責めるような言説がうごめく。正確な情報によって誤情報を否定し、被害者を守ることが政府に求められているのではないか。

 被害者が捜査に協力し公判に臨むことは、同様な被害を出さないとの意思の表れでもあろう。政府全体を通じて、県民の目から事件自体を覆い隠すような一連の対応は、被害者の切実な思いを軽視するものだ。

 池田竹州副知事は地元協議機関のワーキングチームを開催するよう求めた。政府、米軍、県による協議機関は2017年以来休眠状態にある。これも異常な状態だ。直ちに開催するよう要求する。