<社説>自衛隊発足70年 専守防衛に徹するべきだ


<社説>自衛隊発足70年 専守防衛に徹するべきだ
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 自衛隊が発足して70年になった。沖縄に配備されてからは52年である。1日付本紙企画「歩く民主主義100の声」で、各地の慰霊祭参加者100人の意見を聞いた。「南西シフト」による自衛隊増強に対して19人の賛成に対して65人が反対だった。16人がどちらとも言えないと答えた。部分的な調査だが、急激な自衛隊増強に不安を感じる県民の思いがおおむね反映されているのではないだろうか。

 日本国憲法が第9条で「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めていることから、自衛隊は護憲勢力から長年憲法違反の存在とされてきた。これに対し政府は、憲法は自衛権を否定していないとして合憲と主張してきた。現在では国民の大多数が合憲と認めている状態だ。ただ、平和主義に立つ専守防衛が前提だった。

 しかし、自衛隊は変質を続けた。特に2014年以降の変化は激しい。14年に安倍晋三政権は「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」に変え「死の商人」に道を開いた。さらに憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使を容認した。いずれも閣議決定だった。15年には安保関連法を強行採決で成立させた。日本が直接攻撃されなくても政府が「存立危機事態」と認定すれば、海外で米国と一緒に戦闘をすることが可能になった。

 岸田文雄政権でさらにエスカレートする。22年に安保関連3文書を閣議決定し、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、防衛装備移転のさらなる緩和、防衛費の大幅増が決められた。英国、イタリアと共同開発している次期戦闘機の第三国への輸出も解禁してしまった。日本はもはや平和主義でも専守防衛でもなくなってしまった。

 自衛隊と日本軍の連続性も重大だ。那覇を拠点とする陸上自衛隊第15旅団は、沖縄戦で住民を巻き込んだ戦略持久戦を展開した第32軍の牛島満司令官の辞世の句をホームページに掲載し続けている。

 元自衛官の軍事評論家、小西誠さんは本紙への寄稿で、戦死者を英霊として祀(まつ)る靖国神社に自衛隊員が毎年集団参拝しているとし、他の事実も挙げて「今日自衛隊はその精神・思想・軍紀の全てにおいて、旧日本軍=皇軍に回帰しつつあるのではないか」と論じている。沖縄戦の教訓は、軍隊は住民を守らないということだ。自衛隊が日本軍と決別できない意味を県民は重く受け止めざるを得ない。

 日本は専守防衛に徹し、経済や文化の交流と外交によって平和を維持すべきである。南西諸島は、平和の緩衝地帯として非軍事化することが望ましい。再び戦場にされることを断じて拒否する。