<社説>辺野古座り込み10年 安保の不条理可視化した


<社説>辺野古座り込み10年 安保の不条理可視化した
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 米軍普天間飛行場返還に伴う辺野古新基地建設に反対する座り込みが7日で10年を迎えた。6日、名護市の米軍キャンプ・シュワブのゲート前に集まった1200人が新基地建設阻止を訴えた。

 長年続く座り込みの原動力は美ら海への思い、沖縄戦体験に基づいた戦争につながる一切を拒否するという信念、「諦めなければ負けない」という強固な意思である。新基地への抵抗は市民や県民に支えられ、国内、海外の共感を広げてきた。辺野古の闘いは決して孤立しているのではない。

 沖縄の民意を無視し、新基地建設を強行する政府の理不尽な振る舞いは、この10年で一層露骨になった。日本の一地域に基地の重圧を押し付けることで成り立つ日米安保体制の矛盾も露呈した。

 民主主義や平和主義、地方自治に立脚する辺野古の闘いによって、安保体制や新基地建設に絡む不条理が国民の前に可視化されたのである。

 抗議活動を巡って痛ましい事故が起きた。名護市安和では警備員ら2人がダンプカーにひかれて死傷する事故が発生した。亡くなった警備員の冥福と負傷した市民の回復を祈りたい。安全を最優先し、詳細な事故調査が終わるまでは、沖縄防衛局は搬出作業を見合わせるべきだ。

 今また、政府は理不尽な工事を進めようとしている。

 沖縄防衛局は8日、大浦湾側に存在する軟弱地盤の改良に必要なくい打ち試験を始めた。県は「通常の工事の着手とみなす」との立場から、工事に関する事前協議が調うまではくい打ち試験に着手しないよう求めていた。

 ところが防衛局はこの申し出を無視した。林芳正官房長官や木原稔防衛相は、くい打ち試験は「協議などの対象ではない」との立場を崩さなかった。地方自治法では国と地方自治体の関係は対等である。県の申し出を一顧だにしない政府の暴挙は見過ごせない。即刻中止すべきである。

 くいの打ち込み試験に関連する一連の作業が、大浦湾の環境に深刻な影響を与えることは容易に想像できる。事実、試験のため大浦湾に停泊しているクレーン船が、アンカーをつなぐチェーンで移植対象の大型サンゴに傷を付ける事態が発生した。決して許されることではない。

 代執行訴訟に勝訴した政府は1月から大浦湾側にある軟弱地盤の改良作業を加速度的に進めている。大浦湾での作業を進めることで諦めムードをつくり、新基地反対運動を弱体化させようという政府の思惑が透けて見える。

 政府は8月にも大浦湾側の護岸建設に着手する予定だ。沖縄振興予算を絡め、県政に揺さぶりをかけてくることも予想される。沖縄を追い込み、生物多様性の豊かな大浦湾を埋め立てて新たな基地負担を強いる強硬姿勢を政府は改めるべきである。新基地建設が止まる日まで私たちは諦めるわけにはいかない。