<社説>米兵性暴力で抗議決議 県民の怒りを受け止めよ


<社説>米兵性暴力で抗議決議 県民の怒りを受け止めよ
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 米兵が犯した卑劣な事件によって県民の尊厳が傷つけられた。米軍や日米両政府にその認識があるのか。

 沖縄県議会は10日の6月定例会本会議で、相次ぐ米兵による性的暴行事件に対する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。日本政府と米政府・米軍に対し、被害者への謝罪と完全補償などを求めている。ここに示された県民の怒りを両政府、米軍は重く受け止めなければならない。

 連続して発生した米兵による性的暴行事件に対し、日米両政府と米軍は現時点まで公式に謝罪していない。これは到底許されないことだ。

 日米安保条約と日米地位協定に基づいて沖縄に基地を置く米政府と米軍、基地の提供義務を負う日本政府はいずれも事件の当事者であり、米兵による事件を未然に防ぐ責務を果たすべきである。その責務を遂行できずに連続して事件が起きたのだ。真っ先に謝罪し、再発防止策を示すべきではないのか。

 少女を被害者とした米兵事件に抗議した1995年の10・21県民大会で、当時の大田昌秀知事はあいさつの冒頭で「行政を預かるものとして、本来一番に守るべき幼い少女の尊厳を守れなかったことを心の底からおわびしたい」と県民に謝罪したのである。

 県民の生命・財産を守る立場にある県知事の責任を果たせなかったことへの発言である。しかし、最も責任を問われるべきは両政府であり米軍である。これは今日まで続く米軍絡みの事件・事故全体にも言えることだ。

 県議会の抗議・意見書の対象となった米兵による性的暴行事件は5件である。両政府と米軍は全ての被害者に対し、直ちに公式謝罪し、完全補償や精神的なケアに尽くさなければならない。このことが、連続して発生した性的暴行事件に対応する大前提となるべきである。

 同時に、一連の事件では情報伝達と共有が図られなかったことが問題となった。日本政府は事件発生を県に伝えなかったのだ。抗議決議と意見書は「被害者のプライバシーを守ることを第一としつつ、沖縄県および関係市町村への迅速な通報ができるよう、日米合同委員会を通じ、米側との調整を行い、断固たる措置を取ること」を求めている。

 政府は5日、情報共有の改善措置を発表した。しかし、問題となるべきは日米合同委員会における情報共有の合意事項が履行されなかったことだ。その原因を明らかにし、県民に公表すべきなのだ。

 昨年12月と今年5月の事件について首相官邸と外務省は情報を共有したのに、防衛省は報道される日まで事件を把握せず、県にも情報が共有されなかった。合同委員会の合意が形骸化していないか。

 これこそ県民の生命・財産を軽んじるようなものだ。政府は猛省し、早急に抗議決議・意見書の要求に沿った措置を取るべきである。