政治改革や経済対策を争点とした第50回衆院選は自民、公明による連立与党の過半数割れという衝撃的な結果となった。自民党派閥の裏金問題に対する国民、有権者の怒りや不信が今回の結果をもたらしたと言えよう。
「政治とカネ」の問題を根本から断ち切る覚悟を国民に示すことができず、政治不信を増幅させたのである。公示後には、裏金事件で非公認とした候補が代表を務める政党支部に、自民党本部が2千万円の活動費を支給していたことが判明し、さらに国民の怒りを買った。
国民の人気が高かった石破茂首相だったが、内閣支持率の浮揚には至らなかった。総裁選での論戦では地位協定改定の公約などで存在感を示したが、首相就任以降トーンダウンした。党内の力学にあらがえず姿勢を後退させた石破首相に国民は指導力の欠如を見たのではないか。
与党敗北で石破首相は責任を問われることになろう。しかし、2012年に発足した第2次安倍晋三政権から岸田文雄政権までの約12年にわたる自公政権に国民が厳しい審判を下したのである。
物価高に苦しむ国民の目線にあった施策展開に乏しかった。コロナウイルス禍や能登半島地震、能登豪雨への対処も国民は疑問を抱いてきた。自民議員を中心とした政治家と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の根深い関係も浮き彫りとなった。この「政治と宗教」の問題も未解決だ。長期政権の中で生じた緩みを目の当たりにした国民は自公に見切りを付けた。
今後、政権の枠組みを巡って、さまざまな動きが出てこよう。自公は野党の一部を加えた新たな政権の枠組みを模索する可能性がある。一方、与党を過半数割れに追い込んだ野党は新たな政権構想を国民に提示する必要があろう。どちらにしても国民の納得と理解が得られる枠組みでなければならない。
米軍普天間飛行場返還に伴う辺野古新基地建設の是非などを争点とした沖縄選挙区は1区、2区で建設に反対する「オール沖縄」、4区で建設容認の自民が議席を確保した。3区は28日午前0時現在、開票作業が続いている。
県が求める協議を経ないまま大浦湾側の工事に着手するなど、新基地建設を進める政府の姿勢は一層強硬になった。しかし、新基地ノーの民意は依然として根強さを維持している。
新基地建設計画は完成時期のめどが立たないまま事業費は膨張を続けるなど、計画の実現性や合理性の欠如が指摘されてきた。仮に新基地が完成したとしても、米軍が引き続き普天間飛行場を使用し続ける可能性がある。
新基地建設は普天間の危険性除去にはつながらない。政府は辺野古移設に固執せず、県との対話を基調に新たな危険性除去策を模索すべきだ。