<社説>NGOが沖縄報告 人権問題で国際世論喚起を


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 沖縄で米軍基地から派生する問題を人権侵害と捉え、国際社会に訴えて改善を促す取り組みが進んでいる。当事者である日本政府は訴えを受け止め、米国に改善を求めるべきだ。

 非政府組織(NGO)の沖縄国際人権法研究会や反差別国際運動(IMADR)など複数の団体が、米軍普天間飛行場移設に伴う新基地建設や米軍関係者による事件・事故などが「沖縄の人々の人権を侵害している」と訴える4点の報告書を、国連人権高等弁務官事務所に提出した。
 国連人権理事会は、加盟国の人権状況を監視し改善を促すため、2006年6月に発足した国連総会の下部機関だ。日本政府は12年以来3回目の普遍的定期審査(UPR)の対象になっている。12年には日本人拉致問題や日本の司法制度が取り上げられたが、沖縄の問題は対象にならなかった。
 しかし15年9月、国連人権理事会で翁長雄志知事が演説した。沖縄は日米安保体制下で基地押し付けの構造的差別にあえぎ、さまざまな基地被害を受けてきた。翁長知事は「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている」と訴えた。
 翁長知事の演説に対し、日本政府は会場から反論した。発言した外務省側は「日本の国家安全保障は最優先の課題だ。辺野古移設計画は合法的に進められている」などと主張した。沖縄で起こる問題を人権問題だとした沖縄側に対し、真正面から答えたものではなかった。
 今回の審査は国連人権高等弁務官事務所が日本政府やNGOの報告書をまとめ、10月ごろまでにUPRの作業部会が審査し、11月の人権理事会で人権侵害が確認されれば日本政府に改善を求める勧告を出す。
 これまで基地問題について沖縄側が異議申し立てをしても、日本政府は政治的に抑え込み、米国は「日本の国内問題」としてきた。
 しかし国連の場で人権侵害が確認されれば、民主主義国家が守るべき基本である人権を日米両国がないがしろにしていると、国際社会が認めることになる。
 県知事選や衆院選で明示された反対の民意を無視して辺野古新基地建設を強行する日本政府と、それを是とする米政府の姿勢が問われる。沖縄の状況をもっと知らしめ、国際世論を喚起したい。