<社説>北朝鮮「水爆」実験 外交解決も諦めず対処を


この記事を書いた人 琉球新報社

 危険なこの国は一体どこまで暴走し、世界に不安と恐怖を与え続けるのか。

 北朝鮮が6回目の核実験を強行した。「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に完全成功した」と発表している。日本政府も水爆実験の可能性は否定できないと判断している。
 世界の平和と安全を脅かす暴挙で、強い怒りを禁じ得ない。国際法や国連安保理決議にも明確に違反している。唯一の被爆国として強く非難し抗議する。
 北朝鮮は9日の建国記念日を前に核実験に踏み切った。防衛省の分析では、爆発力は過去最大の70キロトンだった。核開発の技術力が一段と進展している。
 今回の実験は、国際社会による制裁を無視して、核開発に突き進む強硬姿勢を誇示したと言える。制裁に効果がないことを強調し、日米韓をけん制する狙いが見える。
 この2カ月間、北朝鮮は米国と威嚇の応酬をエスカレートさせてきた。7月4日と28日には、米本土に届くICBM「火星14」の発射実験を繰り返した。8月29日にはグアムを射程に収める中距離弾道ミサイル「火星12」を発射し日本上空を通過させた。
 北朝鮮の報道によると、実験前に水爆を視察した金正恩朝鮮労働党委員長は「核戦力完成に向けた最終段階の研究開発を締めくくるための総力戦を力強く繰り広げなければならない」と発言した。米国に対抗する核戦力が完成したとの宣言にも映る。
 米本土も狙える核攻撃能力を示すことで、トランプ政権の敵視政策に譲歩を迫る思惑だろう。今後、「核保有国」として米国に認めさせた上で、体制生き残りを主張してくることも予想される。
 国際社会はどう対応するか。これまで制裁に消極的だった中国とロシアも深刻に受け止めなければならない。北朝鮮が核兵器を量産するようになると、中ロにとっても金政権の統制が利かない事態になりかねない。
 安保理は8月5日の制裁決議で、北朝鮮産の石炭や海産物の輸出を全面禁止とした。新たな制裁策として、石油禁輸が挙がっている。
 しかし、日本政府内にも慎重論がある。日本が太平洋戦争に突き進んだのは石油禁輸がきっかけだった。生命線を断てば北朝鮮は「窮鼠(きゅうそ)、猫をかむ」で戦争を引き起こすとの懸念も強い。
 武力衝突という最悪の事態を引き起こさないためにも、国際社会は制裁と同時に、外交交渉による解決も諦めてはいけない。
 日米韓が軸となり制裁圧力を模索しているが、中ロにも責任と役割を果たすよう働き掛けるべきだ。関係各国による対話の枠組みを再構築し、外交努力を強めていくことが肝要だ。
 国際社会が協力して、北朝鮮を対話のテーブルに着かせる戦略を絞り出してほしい。