時給1500円以上―。24日に南城市でオープンする米国系会員制スーパー「コストコ」が提示した全国一律の従業員給与は、県内経営者の話題を呼んだ。2月に採用の募集が始まり、6月下旬までにコストコの国内店舗としては過去最多となる2200人の応募があったという。
従業員300人のうち8割は県内から採用した。6月から学生アルバイトとしてコストコで勤務する女性(22)=那覇市=は「祖母の自宅の近くにあり、英語を生かせる環境で働きたかった。コストコで就職を目指したい」と希望を語った。
県内最大級の求人誌・サイトの「Agre(アグレ)」を運営する求人おきなわによると、直近の県内スーパー8社のレジ業務(高校生を除く)の平均時給は978円。コストコの最低時給は1.5倍強の水準になる。
さまざまな業種で人手不足が課題となる中、既存のスーパーの採用に影響は出ているのか。求人おきなわによると、コストコが募集を始めた2月以降、県内スーパー、コンビニの求職応募者数に変動はみられない。
コストコが南城市外からも人手を集めている一方で、スーパーやコンビニは学生や主婦・主夫ら自身の生活圏で働きたいという求職者も多い。3千人の雇用があったイオンモール沖縄ライカム(2015年開業)と比べてコストコの求人のパイが限られていることもあり、求人おきなわの担当者は「比較的影響はなかったのではないか」とみる。
人手を補おうと、最近では短時間の「スキマバイト」のマッチングサイトに求人を出すスーパーもみられるようになった。ただ、コストコの事例は待遇によって人材は多く集まる現実を映し出す。
3月に沖縄に初出店した食品スーパーのロピアも時給1100円の求人が出ており、県内平均を大きく上回る。
沖縄地方最低賃金審議会は8月、県内の最低賃金(896円)を56円引き上げて952円とするよう沖縄労働局長に答申した。異議申し立てがなければ10月にも適用される。引き上げ幅は過去最大で、賃上げの重要性は増している。
スーパーを経営するある県内企業トップは「時給を引き上げるのは経営者にとって過酷だが、上げられない企業は淘汰(とうた)されていくのも事実。対応していくしかない」と語った。 (當山幸都)
(木―土曜掲載)