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メイクマンの直近の転機は「コロナ禍」だった。
自宅で過ごすことを余儀なくされた人たちが、せめて巣ごもり生活を楽しもうとDIYやガーデニングにはまり、全国のホームセンターは軒並み業績を伸ばしていた。従来は割合が低かった若者やファミリー層も店に訪れるように。そうした中で「初心者が楽しめる棚や箱作りなどのDIY、持ち家のない人もベランダで楽しめるガーデニングなどのアイデアをどんどん提案、発信した」(宮城順一社長)。
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扱う商品にも変化が出た。新たな客層を意識してラインナップを充実。例えば塗料では、定番色だけでなく、仕上がりがアンティーク調になる家具用の商材などを取りそろえた。「おしゃれなカフェのような部屋にしたい」といった若者ら向けの“ライトDIY”商品をこの数年で増やした。
結果、新規客はコロナ禍が収束した今も一定程度定着した。2023年度の売上高は275億円を記録。コロナ禍時期のピーク(282億円、21年度)から若干の反動減はあったものの、コロナ前の19年度(233億円)に比べて高い水準を維持する。
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ニーズを捉えた「提案力」の土台となる専門性は人事戦略で築いてきた。熟練の「元職人」が売り場に立っていることがその一例だ。宮城社長は「若手社員の刺激、勉強にもなる」と説明する。商品に詳しくなることは差別化戦略の根幹だという。
新入社員研修では、県外の取引先企業の工場まで赴く。定番商品の物置は製造過程を見学し、組み立てる技能も身に付ける。「現場感覚」と「バイヤーの大きな視点」の両方を持つ社員を育てることが狙いだと、商品戦略を統括する山内浩一郎常務は説明する。メーカーの担当者を招いた「商品勉強会」も定期開催している。
その強みのシンボルと言えるのが各店にある「DIY相談カウンター」だ。DIYアドバイザーをはじめとしたスタッフが、工具の取り扱い方や必要な資材などの相談に応じ、各店舗1日数十件の相談が寄せられる。
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県外で進む市場の縮小、沖縄での建設業の活況などを背景に、ホームセンター業界では本土企業の沖縄進出も進んできた。昨年には職人向けのショップ「コーナンPRO」も初めて進出した。
競争環境が激化、多様化する中でメイクマンが現在進めるのは“個性の最大化”だ。今後10年の経営方針について、宮城社長は「『ホームセンターを極める』というのが基本中の基本だ」と説明する。
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DIY初心者から職人までの広い客層を満足させるには、商品の種類を充実させる必要があり、最低でも3千坪(約9900平方メートル)以上の売り場面積を確保する。大型店には「パワーセンター」の看板を掲げているが、近い将来、北谷町の美浜店と那覇市の一日橋店も移転を機に拡大し「全店パワーセンター構想」を掲げる。自社の「空白地帯」になっている本島中北部の東海岸にも新規出店を進める予定だ。
「競争に勝つことは大事だが、競争とはならない環境を最初から整えておくことがより重要だ。『沖縄にはメイクマンがあるから厳しい』と思わせる」(宮城社長)。攻めと守りを兼ね併せる。
(島袋良太)