<社説>夜間中学補助廃止 学び直しの場を守ろう

 沖縄戦中・戦後の混乱や貧困のため、学校に通えなかった人の受け皿となってきた県内の夜間中学が存続の岐路に立たされている。

 県教育庁は夜間中学を運営している珊瑚舎スコーレ(那覇市)への支援事業を本年度で終了する。県教育庁は「事業の成果はある程度出たため」と説明している。しかし、珊瑚舎スコーレによると今も支援対象の7人が在籍し、うち5人は来年度以降も学び続ける予定だという。
 教育を受ける権利は、憲法で保障された国民が国に対して要求できる基本的人権の一つであり、戦争や貧困が奪った権利を回復させるのは国の義務だ。学校に通いたいという願いがある限り、一義的には国だが、県も学びの場を保障すべきだ。
 同支援事業は1932~41年生まれの今年86歳から77歳になる人を対象とし、受け入れる学校に講師の手当や光熱費、施設の賃借料の一部などを補助している。本年度は珊瑚舎スコーレへ395万円を補助した。珊瑚舎スコーレは義務教育未修了の人には無料で授業を提供している。県教育庁は支援事業について2015年度で終了する予定だったが、同年度に入学した人たちが卒業する本年度まで延長したと説明している。
 県内には戦中戦後の混乱や不登校などのため、義務教育を修了していない15歳以上の人は6541人(10年国勢調査時点)いて、人口千人に4・7人の割合だ。全国は約12万8千人で人口千人に1人だから、沖縄の割合は突出している。沖縄戦とその後27年続いた米国統治下の影響は大きいだろう。
 国は16年に、不登校などで義務教育を十分に受けていない人への教育機会を確保するため「教育機会確保法」を制定した。同法は、全ての地方自治体に対し夜間中学などの設置を義務付ける。文科省は全都道府県に最低1カ所の夜間中学設置を目指すとの方針だ。
 しかし県内には公立の夜間中学はない。県教育庁は18年度中に夜間中学のニーズ調査をする予定だが、設置の是非を含めて検討はこれからだ。仮に設置するにしても、その間は無償で学べる場は失われる。
 戦後の米国統治下で、沖縄の人には日本国憲法が適用されず、憲法の保障する教育の機会は十分ではなかった。そして今、教育の機会が失われることになれば、2度も義務教育の場を奪われることになる。
 全国的にも夜間中学は、不登校や引きこもり、海外からの移住などさまざまな理由で義務教育を受けていない人の学び直しの場としてニーズがある。
 希望者がいる以上、憲法が保障する教育の機会を確保するのは国や県の役割だ。公立の夜間中学を設置するまでは、その役割を担っている民間への支援を継続し、教室を維持すべきだ。