<社説>佐川氏証言納得せず 安倍首相に最終的責任


この記事を書いた人 琉球新報社

 森友学園への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題に関する証人喚問後も、安倍内閣に対する国民の不信感は根強いことが明らかになった。

 共同通信社の全国緊急電話調査によると、衆参両院で証人喚問を受けた佐川宣寿前国税庁長官の証言に関し「納得できない」との回答が72・6%に上った。
 佐川氏は文書改ざんの経緯に関する証言を全て避けた。改ざんの経緯を明かさず、官邸の関与は明確に否定した。誰が何のために改ざんしたのか真相は分からない。国民が納得できないのは当然だ。
 改ざん問題に対して「安倍晋三首相に責任があると思う」は65・0%で、3月17、18両日の前回調査(66・1%)と比べ横ばいだった。国民は安倍首相に厳しい目を向けている。
 公文書管理法は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と規定している。改ざんは検証や政府の監視を不可能にするため、民主主義の破壊につながる。安倍氏は「最終的責任は首相である私にある」と述べている。国会で改ざん問題を徹底究明した上で最終的に責任を取るべきだ。
 内閣支持率は42・4%(前回比3・7ポイント増)。不支持率は47・5%(同0・7ポイント減)で支持を上回る逆転状態が続いている。
 内閣の不支持の理由は「首相が信頼できない」が50・3%で半数に達している。「首相にふさわしいと思えない」の16・1%を加えると、66・4%が安倍氏に不信感を抱いていることになる。
 安倍氏に対する不信感は別の数字にも表れている。9月に実施される自民党総裁選について次期総裁にふさわしい人を1人だけ選ぶ質問では、石破茂元幹事長が24・1%でトップ。小泉進次郎筆頭副幹事長23・5%、安倍首相23・1%と続き、前回と同じ順位となった。
 現職が連続して3位というのは、国民が交代を求めているからだろう。
 麻生太郎副総理兼財務相の責任に関しては「辞任すべきだ」は47・3%で、辞任不要の43・2%を上回っている。麻生氏は参院予算委で、佐川氏の責任について「極めて大きかった。最終責任(者)になる可能性が大きい」と答弁した。監督責任がありながら、官僚に責任を押し付ける姿勢を批判して、辞任を求めているのである。
 国有地売却を巡って安倍昭恵首相夫人の国会招致が必要だとする答えは60・7%で、不要の34・8%を大きく上回っている。昭恵氏を証人喚問しなければ国民は納得せず、政治不信をますます拡大させてしまう。
 安倍氏は今月中旬からトランプ米大統領、中韓両国首脳、プーチン・ロシア大統領と相次いで会談する。外交で存在感を示し森友問題を巡る政権批判をかわす思惑があるとすれば、もってのほかだ。