<社説>高専高さ制限超 例外扱いは許されない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古の新基地が完成した場合、国立沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)の校舎が、米軍機の運航の安全を規定する高さ制限を超えていることが明らかになった。

 沖縄防衛局は本紙取材に「米側との調整で航空機の航行の安全を害しないとして、沖縄高専はこの制限の対象とならない」と説明した。
 防衛局の説明は詭弁(きべん)にすぎない。新基地建設の前から沖縄高専は建っている。米軍の基準を厳格に適用すれば現在地での建設は難しいはずだ。安全基準を守らず「適応除外」の例外扱いにして事を進めるやり方は到底許されない。
 新基地建設の中止を強く求める。翁長雄志知事が埋め立て承認を撤回する時だ。
 高さ規制を定める米軍の基準「UFC3-260-01」は、滑走路から高さ45・72メートルの上空で、滑走路の中心から半径2286メートルの空域を「水平表面」と定めている。その空域には高さ45・72メートルを超えた建物があってはならないことになっている。
 新基地の滑走路の標高は約10メートルとされることから、米軍基準に照らすと標高約55メートルが建物の高さ制限となる。沖縄高専の校舎と学生寮の高さはいずれも基準を超えている。
 安全基準は海外の米軍施設にも適用される。基準を満たさないのになぜ防衛局は「安全を害しない」と言えるのか。危険な空間に存在する沖縄高専には説明もなく蚊帳の外である。米国と沖縄で命に二重基準があるはずがない。
 同様に高さ制限を超える沖縄電力の送電鉄塔は移設を求めている。矛盾する対応だ。
 現在でも米軍機の騒音で沖縄高専のほか、地域の子どもたちの学習環境に悪影響を及ぼしている。昨年2月、名護市辺野古の上空を垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが低空飛行し、沖縄高専屋上で観測された航空機のピーク騒音レベル(LAmax)で101・9デシベルを記録した。
 2010年7月の測定器設置以降、目視で米軍機が原因と確認できた騒音の中で最大級で、心理的影響や物的影響など環境省設定の基準を上回った。新基地建設で学習環境はさらに悪化するだろう。
 新基地建設予定海域に活断層が走っている可能性がある。防衛局が辺野古海域で17年2~4月に実施した地質調査結果の報告書で指摘している。活断層は過去に地震を起こした形跡があり、将来も地震を起こす可能性がある。
 報告書はC1護岸付近の海底地質を「非常に緩い、柔らかい堆積物」とし「構造物の安定、地盤の沈下や液状化の検討を行うことが必須」とも指摘している。政府が工事を強行している場所は新基地建設地には適さない。
 政府が県外移設を真剣に検討せず、辺野古ありきで新基地建設を強引に進めてきた手法に問題がある。米軍普天間飛行場周辺の危険性は除去したとしても、辺野古周辺の危険性は除去できない。