<社説>普天間第二小避難216回 児童を犠牲にできない


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 教育を受ける権利が恒常的に侵害されている。

 昨年12月の米軍大型ヘリコプターによる窓落下事故があった普天間第二小学校で、米軍機接近による児童の避難は、運動場の使用が再開された2月13日から3学期が修了した3月23日までの39日間に合計216回に上ったことが同校のまとめで分かった。新年度も同じ傾向が続いている。
 最も多い日は一日に23回で、20回以上の日が2日間あった。米軍機接近による避難によって体育の授業は中断する。1こまの授業中に避難指示が複数回出ることもある。「避難が2回あれば授業にならない」という深刻な事態だ。学ぶべき教育課程を履修できない状態がまかり通っていいはずがない。
 窓落下事故後、防衛省と在日米軍は宜野湾市内の学校施設上空の飛行を「最大限可能な限り避ける」ことで合意した。防衛省は合意により「米軍の行動は担保される」と強調していたはずだ。しかし、努力規定のため簡単にほごにされている。
 米軍には合意を履行するつもりはないのだろう。児童が安心して学べる環境を保障するためには、県議会が決議したように普天間飛行場を即時運用停止するしかない。
 日米両政府が普天間飛行場の全面返還を合意してから、今月12日で22年を迎えた。国が県に約束した「5年以内の運用停止」は期限まで約10カ月に迫るが、名護市辺野古移設に反対する現在の翁長県政に責任を転嫁する形で国は困難だとしている。県内各地で普天間飛行場の所属機による事故が相次いでおり、危険性は増すばかりだ。
 3月に普天間第二小の児童を元気づけるため日本青年会議所(JC)沖縄地区協議会が雪遊びイベントを企画した。しかし、普天間飛行場から頻繁にヘリコプターが発着したため、グラウンドで雪遊びを楽しむ児童に避難を指示した。少なくとも5回イベントが中断した。児童の笑い声がヘリのごう音で幾度もかき消される。こんな学校が全国のどこにあるのだろうか。
 約2800メートルの滑走路全体の補修工事が今年1月に完了。補修工事中に米軍嘉手納基地に移っていた固定翼機は補修完了後、普天間飛行場に戻った。その後は外来機も相次いで飛来し、100デシベル超の騒音が飛行場周辺で発生している。学習環境はさらに悪化している。
 相次ぐ米軍機の事故やトラブルに業を煮やし、県教育委員会は今年2月、県内の全小中高校や特別支援学校上空の飛行禁止を米軍に求めるよう、沖縄防衛局に要請した。
 米軍が大規模に駐留するドイツやイタリアでは米国との協定で、受け入れ国側が米軍基地の管理権を確保し、その国の法律を米軍の活動に適用するなど、自国の主権を担保する仕組みがある。日本政府には主権国家として国民の安全を保障する責任がある。