<社説>北朝鮮核実験中止 非核化実現に全力挙げよ


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 北朝鮮が核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射中止、核実験場の廃棄を表明した。朝鮮労働党の中央委員会総会で決定した。非核化を取り上げる南北、米朝首脳会談を前に、北朝鮮として核軍縮交渉に臨む立場を示したものだ。

 核実験とミサイル開発中止を表明したことは歓迎したい。ただし非核化には言及しておらず、核・ミサイル開発の凍結宣言にとどまっている。いつでも後戻りできる状況にあることに変わりはなく、今回の表明を注意深く見守る必要がある。
 北朝鮮は金日成主席の時代から半世紀以上にわたって資金と人材をつぎ込み、核開発を続けてきた。
 2005年2月に核保有を宣言し、06年10月に北東部の豊渓里(ブンゲリ)で、初の地下核実験を実施した。
 その後も実験を繰り返し、17年9月に6回目の核実験を強行した。
 北朝鮮は大陸間弾道ミサイル搭載用の水爆実験に成功したと表明している。爆発規模は毎回大きくなっており、6回目は約160キロトン(TNT火薬換算)で、広島に投下された原爆の10倍だ。
 北朝鮮の核開発は日本にとっても憂慮すべき状況だ。日米韓は北朝鮮が核兵器や核開発計画を放棄することを非核化の中核としている。北朝鮮は朝鮮半島周辺に米国が核兵器を持ち込まないことや、韓国が米国の核兵器を配備しないことを含む朝鮮半島全域の非核化を強調する。
 日米韓など関係国は、北朝鮮の非核化への取り組みを早急に練り上げ、北朝鮮に決断を迫ることが必要だ。特に過去の非核化合意の失敗を繰り返さないためにも、実現性のある非核化作業に向けた綿密な行程づくりを進めるべきだ。
 何よりも信頼を構築することが必要だ。北朝鮮に非核化を求める以上、米国も朝鮮半島に核兵器を持ち込まないことを表明し、朝鮮半島全域の非核化に全力を挙げる必要がある。
 米国は「完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化を達成し、その後に見返りを与える」との立場で、北朝鮮の非核化が最優先としている。一方、北朝鮮は平和体制構築による自国の体制保証と「段階的で歩調を合わせた措置」による非核化を求めている。
 米朝の立場は異なっている。南北、米朝の首脳会談は立場の違いをどう埋めていくかが重要となる。対立点解消に注力すべきだ。
 北朝鮮は核実験中止について「世界的な核軍縮のための重要な過程だ」とし「核実験の全面中止のための国際的な努力に合流する」と表明した。
 これを好機と捉え、北朝鮮の核放棄に向けた具体的取り組みへとつなげたい。東アジアの安定化に不可欠な朝鮮半島の非核化を実現するためにも、国際社会が緊密に連携を深める必要がある。