<社説>南北首脳会談 非核化へ大きな一歩


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 完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島の実現、恒久的平和へ向け大きな一歩を踏み出した。

 韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が板門店で初会談し、共同宣言に署名した。10年半ぶり3回目の南北首脳会談は、年内に朝鮮戦争の終戦宣言をし、休戦協定を平和協定に転換するための会談を進めることで一致した。米国や中国を交えた会談を推進することで合意しており、歴史的な共同宣言と言えるだろう。
 非核化に向けた道筋は示さなかったが、完全な非核化実現という共通目標を確認した。今後、6月初旬までに予定される米朝首脳会談で、非核化実現に向け、さらに踏み込んでもらいたい。
 共同宣言は一切の敵対行為を全面的に停止することや、現在双方が火器を配備している非武装地帯の実質的な非武装化を進めることでも合意した。韓国の文大統領が今秋に訪朝することや、北朝鮮の開城に南北共同連絡事務所を開設することで一致した。
 南北は2000年の第1回首脳会談で統一問題の自主的解決などで合意した。07年の第2回会談では朝鮮戦争の「終戦宣言」実現への努力を約束したがいずれも政権交代などで実現しなかった。
 3回目の首脳会談に、金委員長は北朝鮮の最高指導者として朝鮮戦争後初めて軍事境界線を越え南側の韓国に入った。金委員長は「対決の歴史に終止符を打つ」と表明し、文大統領は「分断の象徴だった板門店が平和の象徴になった」と応じた。
 朝鮮半島の恒久平和へ向けた意気込みを感じさせた。南北対立を乗り越え、北東アジアに新しい秩序が構築されようとしている。
 一方、朝鮮半島の恒久平和実現は、沖縄が担わされてきた基地の過重負担に変更を迫ることを意味する。
 嘉手納基地を中軸とする沖縄の米空軍は、朝鮮戦争と深く関わっていた。さらに嘉手納基地、米軍普天間飛行場、ホワイトビーチ地区は、在日米軍だけでなく朝鮮国連軍の基地でもある。
 現在でも、朝鮮半島の制空権確保のバックアップとして嘉手納基地にF15戦闘機が配備され、ステルス戦闘機F35Aも暫定配備されている。北朝鮮で核開発の動きがあると電子偵察機が米本国から嘉手納へ飛来する。
 朝鮮戦争が終結すると在沖米軍基地は、国連軍基地ではなくなり、北朝鮮の攻撃対象から外れる。朝鮮半島情勢が安定すると沖縄の基地の価値は低下する。海兵隊の地上戦闘部隊が沖縄に駐留する必要もない。普天間飛行場を維持し続けることや、名護市辺野古への新基地建設は大義名分を失うことになる。
 南北首脳および日米中ロの関係各国は、朝鮮半島を含む北東アジアで生まれつつある平和共存の枠組みを後戻りさせてはならない。