<社説>海空連絡メカニズム 尖閣周辺を平和の海に

 尖閣諸島などの東シナ海を平和の海にする出発点としたい。日中両政府は自衛隊と中国軍が偶発的に衝突する不測の事態を避けるため、防衛当局間の相互通報体制「海空連絡メカニズム」を始動させることで正式合意した。

 海空連絡メカニズムは尖閣諸島周辺海域などの東シナ海で、不測の事態を回避する仕組みだ。艦船や航空機間の連絡方法の整備が柱となる。これを機に日中が密に連絡を取り合い、偶発的な軍事衝突を避けてほしい。
 同システムは2007年4月、当時の安倍晋三首相と温家宝首相が体制整備で一致し、12年6月にはホットライン設置などの枠組みで大筋合意した。しかし同年9月の日本政府による尖閣国有化に中国側が猛反発し、協議が中断した。15年1月に協議が再開され、日本側は早期運用開始を求めていた。11年越しの合意を歓迎したい。
 ところが今回の合意では中国艦船による尖閣諸島周辺の領海侵入などの懸案を棚上げした。対象範囲に尖閣諸島周辺の領海と領空が含まれるかどうかを明示しない「玉虫色決着」としたのだ。どのレベルを対話窓口にするのかなどの細部も決まっておらず、枠組みができただけともいえる。
 日本側は尖閣周辺の領海、領空は対象外にすべきだと主張し、中国側は対象外とすれば日本領と認めることになるとして、難色を示していたためだ。
 尖閣は日中双方が領空の外側に設けた防空識別圏が重なった空域下にある。東シナ海で衝突の危険性が最も高いのは尖閣諸島周辺だ。その場所を対象範囲に明示しないのは、仕組みの目的に明らかに反している。
 それだけ尖閣問題が両国にとって、深い対立を生じさせ、極めて繊細な問題であることを示しているといえる。
 尖閣は沖縄からすれば、琉球の時代から琉球人の生活圏だ。その場所が紛争を誘発する状況に置かれているのは不本意だ。領有権問題が再燃したのは、12年に当時の石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島購入構想を打ち出したのが発端だ。対中強硬姿勢を強めていた石原氏側が購入すれば、武力衝突に発展しかねないとして、当時の民主党政権が魚釣島など3島を国有化した。
 中国は直ちに抗議し、日中関係は政治だけでなく、貿易や民間交流を含め多方面で悪化し「政凍経冷」と形容されるほど冷え切った。
 12年12月には中国が尖閣付近で初めて領空侵犯し、その後も中国の軍艦が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射したり、中国軍機が自衛隊機に異常接近したりと一触即発の事態が続いた。
 尖閣は棚上げされたが、今回の合意で日中の軍事当局による連絡体制の構築が実現した。ひとまず、これを足掛かりにして緊張緩和を進め、平和的解決につなげたい。