<社説>宮森小米軍機事故 今からでも賠償すべきだ


社会
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 被害を与えたらならば、賠償する。一般社会では当然のルールさえ守れない組織に存在する資格はない。

 戦後沖縄で最大の米軍事故である宮森小米軍ジェット機墜落事故によって、複数の児童に精神神経症の症状が出たにもかかわらず、在沖米軍が被害者の賠償請求に応じていなかったことが米国立公文書記録管理局(NARA)の資料で明らかになった。

 被害者に対する米軍の不誠実な対応は、石川・宮森630会が事故から60年となる2019年に向け、当時の米軍資料の翻訳や新たな証言収集に取り組む中で突き止めた。

 その活動は墜落事故の記憶を風化させないというだけでなく、歴史に埋もれていた事実をも掘り起こした。高く評価したい。

 宮森630会がNARAから入手した資料によると事故後、不眠や不登校、大きな音を怖がるといった症状が児童に表れていた。

 子どもたちに「夜、突然叫び出す」といった症状があるとして、保護者が診断書を添えて米軍と交渉したものの、米軍は米陸軍病院で実施した診断で症状を否定。精神的な症状を訴える児童への賠償に最後まで応じなかった。

 それだけではない。資料には米軍が賠償額の査定を始めるに当たり、本国から「賠償を是認しないよう勧告された」との記述もある。精神神経症の有無にかかわらず、国ぐるみで賠償しないことを決めていたのである。許してはならない。

 墜落事故の概要はこうだ。米軍嘉手納基地を飛び立った戦闘機が宮森小近くの住宅地に墜落し、衝撃で跳ね上がった機体が宮森小に突っ込んだ。事故発生時はミルク給食の時間でほとんどの児童が校内にいて、死者18人(うち1人は後遺症で死亡)、重軽傷者210人を出す大惨事となった。

 事故発生直後、米軍は「エンジン故障による不可抗力の事故」と説明していた。だがその後、米空軍がまとめた事故調査報告書は事故の「最大の要因は整備ミスだった」とし、人為的なミスが原因だったと結論付けていたことが分かっている。報告書は「飛行に必要な整備を欠いたまま整備監督者が飛行を認めた」とも指摘している。

 米軍が整備点検さえしっかりしておけば、児童の生命が奪われることはなかったし、児童が精神神経症で苦しむこともなかった。

 死者を出すなど多大な被害をもたらした墜落事故を起こしておきながら、米軍には当事者意識が一切感じられない。県民の命、人権を軽視していると断じざるを得ない。それは戦後73年たった今も変わっていないのではないか。

 墜落事故は59年前の1959年6月30日に起きた。だが、過去のこととして放置してはならない。今からでも遅くない。米軍は賠償請求に応じるべきだ。